研究課題/領域番号 |
17K02080
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
姫岡 とし子 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (80206581)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナショナリズム / フェミニズム / 性暴力 / ドイツ近代 / ネイション / 植民地 / 占領 |
研究実績の概要 |
本年度は戦時の性暴力を主要なテーマとし、共著で『戦争と性暴力の比較史へ向けて』を出版(岩波書店、2018年2月)し、論文「ナチ・ドイツの性暴力はいかに不可視化されたか―強制収容所内売春施設を中心として」を寄稿した。戦後ドイツでの性暴力に対する社会の取り扱い方を時系列的に描き、比較的フランクに語られた戦後、沈黙が支配した1950年代から80年代、国際的な流れを受けて性暴力に関する研究が開始されたが、社会的な認知については他の戦争犯罪に較べて遅れている1990年代以降について、それぞれ時代の社会的・政治的背景を鑑みながら考察した。強制収容所内売春施設で性労働をさせられていた女性たちが、囚人ヒエラルキーの最下位におかれ、囚人たちからも、社会からも差別されていたこと、受けた性暴力のなかでも、何をどう語れるのか、あるいは語れないのかについても述べた。この研究は、「慰安婦」問題、日本人女性が連合軍による占領や満州からの追放の過程で受けた性暴力との比較観点から考察したもので、比較の意義や被害の語り方、オーラルヒストリーの可能性と困難などについて、他の著者とともに、数回研究会を重ねて議論を深めた。 他に『戦場の性ー独ソ戦下のドイツ兵と女性たち』の著者であるレギーナ・ミュールホイザー氏を招いて講演会を開催し、講演内容を翻訳出版した。その他、これまでに収集した資料の読み込みをするとともに、グローバルヒストリーにどうジェンダー史を接続していくか、感情史とジェンダーなどについての歴史方法論に関する考察も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文「ナチ・ドイツの性暴力はいかに不可視化されたか―強制収容所内売春施設を中心として」を執筆し、その過程で、日本が戦時中に行使した、また被害を受けた性暴力について、その分野の専門研究者と活発に研究交流することができた。またドイツの性暴力研究の第一人者であるレギーナ・ミュールホイザー氏を招聘して、東京と京都で2回研究会を行い、戦時性暴力についての理解を深めるとともに、研究を推進あるいは阻害する要因について、日独比較の観点から考察を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、夏にカナダのバンクーバーで開催される国際女性史学会に参加し、世界各地の研究者との交流を行う。秋には、ドイツの植民地であったナミビアをドイツ人専門研究者の支援を受けながら訪問し、ドイツの植民地史跡を見学するとともに、研究交流を行い、資料を収集する。引き続きドイツを訪問し、図書館および文書館で資料を収集する予定。帰国後に、資料の読み込みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度にドイツへ史料収集に行くつもりであったが、研究の進行具合を鑑みて、次年度にまわした。また次年度にははカナダでの国際女性史学会、ドイツの旧植民地ナミビアおよびドイツに出張するため、交付決定額では不足するため、次年度の旅費を確保した。本年度は、2回の海外出張で、交付金以上に旅費を支出する予定。
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