コロナのため海外出張ができず、科研期間を延長していたが、今年は最後の年となった。これまでの総まとめをするべく9月末から10月初旬にかけてドイツに出張し、最後のつめをするための文献を収集し、ナショナリズム・植民地に関する博物館の訪問や研究交流を行った。 昨年執筆したが、まだ刊行されていない論文の修正に取り組んだ。この論文は、ナポレオン戦争期から第一次世界大戦前夜までの100年あまりのドイツのナショナリズムをジェンダーとの関連で考察した論文ものである。この100年を、1,ナポレオン戦争期、2,恒常的なナショナルな女性協会が結成される1860年代後半以降から世紀末3,覇権競争が激化し、植民地に獲得・経営にのりだした世紀転換期から第一次世界大戦前夜までの3つの時期にわけて考察した。 本年度はナショナリズムと植民地に関する考察をさらに深め、植民地研究のあらたな動向を把握し、植民地側と被植民地側のコロニアルな文化的接触にかかわる状況について具体的に考察した。植民地者と被植民者を所与の二項対立的なものとして捉えるのではなく、西洋/非西洋を差異化する両者の関係性のなかで植民地を捉える視点からの研究である。西洋=文明/非西洋=野蛮という差異化の形成に女性運動も積極的に参加し、西洋の維持・強化、植民地に「新しいドイツ」を作るために、血と文化の観点を主張し、男性には代替不可能な女性の活動の意義を唱えることで、女性の地歩を確立していった。
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