研究課題/領域番号 |
17K02086
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大串 尚代 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70327683)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 翻案文学 / ポカホンタス / 少女マンガ / 翻訳児童文学 |
研究実績の概要 |
29年度は本研究の全体的な根幹をなす、明治・大正期におけるアメリカ文学の受容の調査を行うことを中心に行った。19世紀のアメリカ小説に関しては、申請者がこれまで行ってきた研究においても扱ってきた題材であるが、日本での受容という観点から精査した。 まず、植民地時代のネイティヴ・アメリカン女性ポカホンタスと、イギリス人男性ジョン・スミスのロマンスを扱ったジョン・エステン・クックの翻案とされる『貞操英国美譚』(明治18年)について原本と照らし合わせ、どのように日本にこの異人種間ロマンスを扱った「神話」が紹介されたかを検討した。翻案とはいえども、物語の筋がかなり異なっているため、『貞操英国美譚』のネタ本は他にあるのかどうか、今後継続的な調査が必要と思われた。また、29年度の研究計画として予定していたハリエット・ビーチャー・ストウの『アンクルトムの小屋』を永代美知代が翻訳した『奴隷トム』(大正12年)については、広島大学が提供している「広島の女性作家」のウェブサイトなどから永代の発表作品がかなり分かってきたこともあり、永代とアメリカとの関わりについては大まかなところが見えてきた。しかし、なぜ永代が翻訳を担当するにいたったかについての資料が見つからず、これもまた継続的な調査が求められる。 ポカホンタスについては捕囚物語としての側面から、アメリカ文学会東京支部で発表を行い、またアメリカ文学の日本少女文化(マンガ)への影響については、フランスで開催された全米女性作家協会の大会にて発表を行い、活発な質疑応答によって、今後の研究に有益なコメントが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、これまでの調査状況を見直しつつ、調査が十分に足りていないところを補う予定であったが、国会図書館での調査にかける時間が当初の予定よりも少なくなってしまったため、予定した進捗よりもやや遅れてしまうこととなった。今後は資料にあたる時間を十分に確保できるよう時間を調整し、計画的に研究を進めることとする。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、前年度の日本での翻訳小説の調査を続行しつつ、少女雑誌にみられる西洋表象を精査し、近代化する中での日本において、西洋がどのような言説として語られているかについて、とくにジェンダーの問題とからめて考察する。対象とする少女雑誌は日本で初めての本格的な女性誌と言われる『女学雑誌』および刊行期間の長い『少女の友』とする。女子教育の制定により生まれた女学生という存在と、彼女たちが創り出している少女文化の中で、西洋的な文化・表象がどのように受容されていたのかを時代背景とともに調査する。主な調査地としては、国立国会図書館、また少女雑誌のすぐれた蔵書を持つ熊本県菊池郡にある菊陽町図書館、弥生美術館を予定している。
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