研究課題/領域番号 |
17K02086
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大串 尚代 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70327683)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 少女マンガ / GHQ/SCAP / 外国文学 / 翻訳 / 海外渡航自由化 |
研究実績の概要 |
2019年度は、主にこれまでの研究成果物をまとめ、著書として刊行するための原稿執筆を中心にすすめてきた。その中で、第二次世界大戦後のGHQ/SCAPによる指導のもとで翻訳出版が行われていた時代について、その出版プロセスをアメリカの国立公文書館にて調査した。GHQ/SCAPにあてた出版申請の書類、著者や翻訳者、出版社による企画書などの書類を精査し、出版の可否に関係する興味深い内容の書類を見つけることができた。また、日本の国立国会図書館に通い、1960年代の少女マンガ雑誌の創刊時のコンセプトを抽出する作業も行ってきた。それをもとに、すでに発表した論文の改稿を行い、単著の執筆をすすめている。 また今年度は19世紀アメリカ女性作家についていまいちど見直しをし、特に19世紀中盤から南北戦争後にかけてのマニフェスト・デスティニーを再考した。このアメリカの国土の拡張は、文化の拡張へと繋がっていく重要なムーヴメントと考えられ、そのことについて女性作家らがどのような反応をしめしていたかについて考察した。その成果は日本アメリカ文学会の全国大会にて報告した。西部と女性作家およびそのイメージの少女マンガへの影響の可能性については、すでに過年度で研究しているが、当初の研究は東海岸の作家が中心だったため、今年度の研究では西部出身の作家が東をどう見ていたかという視点を取り入れた。そのことによって、東西および南北という方向からアメリカ女性文学を考えることができ、研究にいっそうの厚みをもたらすことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度である2020年度に単著出版をめざし、2019年度はこれまでの研究成果を見直し、修正・加筆・補強する作業を中心に行ってきている。今後原稿を改稿する過程においていくつか確認しなければならない事項が出てくる可能性はあるが、現在はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は単著の刊行をめざし、これまでの研究成果をとりまとめる作業に集中する予定である。これまでの研究は、主に19世紀アメリカ女性作家の家庭小説の作品と、日本の少女マンガとの関係を見てきたが、1970年代80年代の日本の少女マンガには、19世紀アメリカン・ルネサンスのいわゆるロマン派的な男性作家の作品世界を吸収している作品も見受けられる。2020年度はアメリカン・ルネサンスと少女マンガの親和性の可能性をさぐり、それをこれまでの研究成果に付け加え、単著に含めることで完成としたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国内の調査出張が、学内業務その他の都合で赴くことができず、そのため想定していた少ない使用額となってしまった。次年度は最終的な原稿執筆のため、いくつか調査を行う必要があり(徳島県立文書館、上下歴史文化資料館など)、資料調査および、資料整理のための物品費に使用する予定にしている。
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