本研究の目的は、日本の少女文化におけるアメリカ文学・文化の受容について、その歴史的背景を明治期に遡り、第二次世界大戦後の民主化政策を経た1970年代までを考察することであった。 最終年度である2022年度は、日本における少女マンガが歴史的にどのようなジェンダー表象を生産してきたかについて検討し、論文「少女マンガとジェンダー」を執筆した。この論考は『ジェンダー×小説ガイドブック』(ひつじ書房、2023年)に収録予定である。また、本年度は、19世紀におけるアメリカ文学における女性表象について検討した。少女マンガにおけるジェンダー表象については、今後より詳細なリサーチをおこない、議論を発展させていくつもりである。また、アメリカ文学と日本の少女文化との関連性については、引き続き19世紀の女性作家に関するリサーチを行い、家庭性(ドメスティシティ)と自立、ケアの問題について検討した。また、本年度は男性作家による女性像についても考察した。具体的には、19世紀末に歴史小説『ジャンヌ・ダルクについての個人的回想録』を執筆し、その中で「主体」の問題に切り込んだマーク・トウェインについてである。 本研究期間には、アメリカでの調査や国会図書館などで収集した資料に関する調査を経て、日本の少女文化の中にいかにアメリカ表象が取り入れられていたか、少女マンガという媒体がいかに重要な文化装置であったかを論じた。その学術的成果として国内外の媒体での論文発表、また国内外での口頭発表を行った。それらをもとにして2021年には単著『立ちどまらない少女たち--<少女マンガ>的想像力のゆくえ』(松柏社)を刊行した。
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