研究課題/領域番号 |
17K02090
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
古沢 希代子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80308296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 気候変動 / 自然災害 / レジリエンス / 自然資源管理 / 灌漑システム / 住民組織 / ジェンダー平等 / 行動変容 |
研究実績の概要 |
今年度の研究は、8月の現地調査が中心であった。 成果(1):アタウロ島訪問で、国際NGOのWorld FishとPlan Internationalが東ティモールの環境農業団体Parmatilと共同で実施している、漁村における気候変動対応強化プロジェクトの視察である。アタウロ島はインドネシア占領時代に独立派政治犯が収容された島であり、村落間の移動は徒歩と小舟に限られている。島では女性もダイバーとして漁をし、海藻や貝の採取も行う。しかし、その規模は零細であり、かつ、近年では漁獲量の減少や海藻の死滅が起きている。3団体は、海の生態系変化と降雨量の減少に対応する海藻の移植と山頂のため池づくり及び食料/栄養確保のための畑づくりを支援している。プロジェクトでは生業を担っている女性の参加が推進された。女性たちは海藻を使った菓子や麺類の製作も始めており、ホテル等で販売されている。プロジェクトを通じたジェンダー関係の変容については、2020年3月にインタビュー調査を実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大により叶わず、インタビューは次年度に延期となった。 成果(2):気候変動への対応力にとって重要な役割を果たす、大規模灌漑スキームと水利組織の現況についてフィールド調査を継続している。カラウルン灌漑スキームは、依然として主幹施設の維持管理の問題を抱えているが、水利組合の再編は完了しており、新組合長と面会した。マリアナ第一灌漑スキームでは、維持管理と水利費の支払いの向上のために水利組合理事会内部の議論が進行しており、会合への参与観察を実施した。 成果(3):国際NGO、Care Internationalの気候変動/防災担当者から、政府が県や村と共同して、全国的かつ常設の防災体制の体制の構築に着手したという情報を得た。この体制における女性の参画推進に関する取り組みを調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年8-9月の現地訪問によって初めてアタウロ島の訪問が実現した。しかし、気象条件による同島への船便と島内における小舟のチャーターが制限され、滞在は1泊2日のみとなった。また、マヌファヒ県のカラウルン灌漑スキームでは、4月に選出された水利組合の新執行部のうち、組合長には面会できたが、その他の役員には会えなかった。ボボナロ県のマリアナではオーストラリア政府の支援による栄養改善のための作物多様化事業のプロジェクト事務所を訪問し、灌漑システムによる水の確保がそうした活動も支えていることを確認した。しかし、マリアナ第一灌漑スキームの理事会(女性理事も参加)において8月に議論された新方針(支線グループ単位で維持管理の予算案を出し、組合で承認後、執行する)の進捗をその後確認できていない。3月に予定していた東ティモールへの渡航とフィールド調査が新型コロナウイルス感染拡大による入国禁止により実施できなかったため、残された課題に関する現地調査が実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大の収束と入国制限の解除を待って、8-9月、あるいは、年末年始、あるいは、3月に現地調査を行う予定である。調査地は、2008-10年から定点観測を続けてきた平野部大規模灌漑地域(ボボナロ県マリアナ、マヌファヒ県ベタノ)と、アタウロ島の漁村、そして、学校のトイレに水がないため月経期間中に女子が学校を欠席しがちになる山間部の村である。また、食料生産、防災、気象観測に関わる関係省庁を再度訪問し、気候変動への対応に関する政策を確認する。東ティモールにおいても、気候変動による降雨量の減少や不安定化、そして海水温の上昇等が、人々の生活や生業にさまざまな影響を与えているが、そうした問題が女性たちの生活と生業にどのような影響をもたらし、また、コミュニティーや国が対策を講じる過程に女性たちがどのように関与し、それがジェンダー関係の変容にどのように影響するのか、地理的条件の異なる地域で追究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により東ティモールへの渡航が不可能になったこと。感染の収束と入国禁止の解除を待って、2020年度の8-9月、あるいは、年末年始、あるいは3月に現地調査を実施する予定である。
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