研究課題/領域番号 |
17K02090
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
古沢 希代子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80308296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 気候変動 / 自然災害 / ジェンダー / レジリエンス / 防災・減災 / 緊急救援 / 女性のエンパワーメント |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染拡大により、2020年3月以降、現地調査の実施が延期されている。その間の2020年4月と2021年4月、現地は大規模な豪雨災害に見舞われた。とくに2021年は、3月29日から4月4日まで続いた豪雨により、首都ディリ及びその近県を中心に独立後最大級の洪水及び土砂災害が発生した。4月22日から28日の状況をカバーする国連(UN Resident Coordinator's Office)の報告では、被災した家屋は31,337軒、被害のあった農地は2,163ha、首都に開設された避難所は25カ所、避難所で暮らす人は3,925人、死者は41名にのぼった。コロナ禍で発生したこれらの災害に際して、現地関係者と連絡を取り、また、資料を収集することにより、ジェンダーの視点に立った緊急救援の取り組みに関する情報を収集した。その結果、関係省庁、国連機関、国際NG0、現地女性団体が協働して女性をはじめ様々な立場の人々のニーズを特定し、対応を調整する連携が行われていることが明らかになった。 まず、子どもと女性に加えて、障害を持つ少女と女性、妊娠中や授乳中の女性、シングルマザー、性暴力サバイバー、シェルターや施設の居住者、LGBTIQが、災害に対して脆弱な人々とされ、日常的な不平等が情報と資源(水、食料、生理用品、医療)へのアクセスの障害になる傾向が指摘された。また、避難所となったある学校で衛生施設(トイレ)の使用が認められていなかったことが問題とされた。避難所ではコロナへの感染対策に加えて、安全・安心のためにトイレと水浴場が男女別に別れ、扉には内側から鍵がかかり、灯があること、授乳のための場所及び男女別の滞在ペースの確保の必要性が強調された。さらに、性暴力・児童虐待・DVの対策では、警察庁の弱者保護ユニットに特別捜査官が配置され、避難所等への訪問を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月以降、現地での調査が延期されている。具体的には、気候変動対策としても重要である水利施設の維持管理と水利組織の運営に関する現況確認(2008-10年から定点観測を続行している3スキーム)とPlan International Timor-Lesteがアタウロ島などで実施してきた気候変動に対するレジリエンス強化事業への再訪が実施できていない。 この間、東ティモールでは2020年3月に最初の新型コロナ感染者が確認され、その直後(2020年4月)に首都ディリで豪雨による洪水被害が発生した。その事態を受け、2018年に科研費で招聘したPlan International Timor- Lesteのアンジェリーナ・アラウジョ氏と連絡を取り、Planの活動に関する情報を得た。Planは、アイレウ県、アイナロ県、コバリマ県、首都ディリで活動を展開してきたが、新型コロナ対策では、消防署、警察署、行政機関、NGO、地域グループとともに新型コロナに関する啓発キャンペーンを実施し、「新型コロナIEC(情報・教育・コミュニケーション)」資料を届け、衛生キット(水タンク、たらい、石鹸)を配布、また、少女/思春期女性に対して、生理用品とリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)に関するチラシを配布した。さらに、コミュニティーラジオを通じてジェンダー問題や子どもの保護を訴え、首都ディリではLGBTIQ団体及び障害者団体と連携して衛生キットと食料を配布し、情報を伝達した。さらに、非常事態宣言発令後の「ステイホーム(外出禁止)」期間では、DVが増加することを予想し、ポスター作成など啓発活動を実施した。こうした活動は2021年4月以降の被災者支援の枠組み形成につながっていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナによる出国と入国制限が解除されれば、2021年度中に現地調査を再開する予定である。この度の大災害を受けて、今後の現地調査は以下を計画している。 まず、2021年4月のサイクロン被害はエルメラ県、アイレウ県、マナトゥト県でも深刻であった。例えば、アイレウ県とエルメラ県では、Plan Inernational Timor-Lesteによる女性のエンパワーメントと男女共同参画を目指した防災・減災プロジェクトを実施されてきた。そうした地域における、2021年4月の災害による被害の状況、防災への取り組み、被災者救援、復興の状況及びそのジェンダーインパクトを確認する。あわせて、2019年9月時点で確認した行政主導の防災ネットワークがどのような活動を行い、女性はどのように参加したか、また、既存の気象観測体制は災害発生前にどのような情報発信を行ったのか、避難勧告は出されたのか等チェックを行う。 次に、気候変動対策としても重要である水利施設の維持管理と水利組織の運営に対する女性の参加に関する現況確認(2008-10年から調査を続けている3スキーム)とPlan International Timor-Lesteがアタウロ島で実施してきた漁村における気候変動に対するレジリエンス強化事業への再訪を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大によって予定していた現地調査が延期されている。2021年度末にはワクチン接種完了により出国が可能になると予想されるため、現地の感染状況及びワクチン接種の状況等をみながら、年末年始と(あるいは)2022年3月に現地調査を実施する計画である。
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