研究実績の概要 |
2021年度もコロナ感染により現地調査の実施は叶わなかった。そのため、ジェンダーの視点から自然災害や環境破壊のインパクト及び予防、緊急救援、復興開発に関する施策を分析した先行研究の検討を行い、2019年度までに実施した東ティモールでの調査で得られた知見を含めて「フェミニスト経済学研究会」(2022.3.31 有斐閣オンライン)で報告を行った。 主な参照研究は、浅野・天堂編著(2021)『災害女性学をつくる』生活思想社, Buckingham & Masson ed.,(2017)Understanding Climate Change Through Gender Relations, Routledge, MacGregor ed.,(2017)Routledge Handbook of Gender and Environment, Williams(2016) Gender and Climate Change Financing - Coming out of Margin, Routledge, Buechler & Hanson ed.,(2015)A Political Ecology of Women, Water and Global Environmental Change, Routledge, Enarson & Chakrabarti ed.,(2009)Women, Gender and Disaster - Global Issue and Initiatives, Sageである。その結果、インド西部地震、ネパール大地震、東日本大震災などの経験等から、平時におけるジェンダー関係と女性のアクティビズムの存在の有無が被災時の状況や救援及び復興への参画に影響を及ぼすことが明らかになった。また、自然資源保全の分野では、古典的実証研究であるAgarwal(2009)Gender Perspectives on Environmental Action - Issues of Equity,Agency and Participationは、一時的な異議申し立てを超えて、日常的かつ長期的に女性が森林保全に関与する際の障害と意義を明らかにしており大変貴重であった。一方、国際的な討議の場に視点を移すと、気候変動枠組み条約会議において交差性を持ったジェンダー視点の配慮が問われており、国際的金融措置への監視の重要性を認識した。
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