研究課題/領域番号 |
17K02095
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
菅野 優香 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 准教授 (30623756)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クィア / LGBT / 映画祭 / コミュニティ / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
映画祭とクィア・LGBTコミュニティ、アクティヴィズムに関する論文「コミュニティを再考する―クィア・LGBT映画祭と情動の社会空間」を『クィア・スタディーズをひらく』(菊地夏野編、晃洋書房、2019年)に執筆した。映画をめぐる集合的な経験としての映画祭を情動の社会空間として概念化し、とりわけ地方の映画祭と地域アイデンティティとの関係を具体的に分析することによって、地方映画祭がどのようなかたちでLGBTコミュニティやアクティヴィズムとして機能しているかを考察した。クィア・LGBTにとってのコミュニティの両義性をクィア理論やフェミニズムの視点から批判的に分析した点に意義があるといえる。「政治的なことは映画的なこと―1970年代の『フェミニスト映画運動』」(『思想』1151号、2020年3月)において、クィア・LGBTアクティビズムの源流のひとつであるフェミニスト運動を取り上げ、映画および映画祭が1970年の女性運動において果たした役割について考察を行った。ジェンダーやセクシュアリティの規範性を問うてきたフェミニズム映画運動を再考することによって、現在のクィア・LGBTコミュニティが映画祭に与える大きな役割について考察を深められたと思っている。「ジュディ・ガーランドを愛するということ―キャンプ・ドラァグ・フェミニズム」(『映像学』103号、2020年1月)においは、ストーンウォール蜂起50周年を迎え、クィア・LGBT文化や歴史の掘り起こしが進行中のアメリカを背景に、ゲイ・コミュニティと映画文化が取り結ぶ強い絆について考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年8月から2019年8月までの1年間、在外研究のためアメリカ合衆国に滞在したが、共同研究およひ研究会議のため、予定されていた地方での映画祭調査を大幅に縮小せざるをえなかった。また在外研究により、2019年度に予定してい た国際シンポジウムの開催も不可能となった。日本に帰国したのが8月以降、国内で調査対象としていた映画祭はほぼ終了していたため、2019年度に調査ができたのは、香川レインボー映画祭および愛知国際女性映画祭のみとなった。代替措置として、ニューヨークを中心に開催された映画祭や上映活動に足を運び、調査を行った。また前年度に引き続き、アメリカにおけるクィア・LGBTコミュニティ、アクティヴィズムに関する資料収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
在外研究によって研究課題の進捗状況に遅延が生じたたため、補助授業期間の延長を申請し、承認された。研究計画を見直し、2年目およひ3年目に予定していた調査や国際シンポジウムの実施を今年度に行う予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、アメリカおよび日本国内の映画祭がすべて延期・中止となってしまった。そのため、当初の調査予定に入っていなかった映画祭も射程に入れ、オンライン映画祭やその他の新しい取り組みを始めた映画祭に焦点を当て、係る状況において映画祭のポリティックスがどのように変容するのか、またクィア・LGBTコミュニティがこうしたパンデミックにいかに対応していくかに注目し、研究を遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
在外研究によって研究課題の遂行に遅延および変更が生じたため、補助授業期間の延長を申請し、承認された。映画祭調査に関する計画を見直し、新たな研究計画を立てたが、新型コロナウィルス感染拡大防止の対応のため、現時点ですでにそのほとんどが延期・中止を決定した状態である。そのため、オンライン映画祭やその他の新しい取り組みに焦点を当てた調査を行う計画である。
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