研究課題/領域番号 |
17K02105
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
香坂 玲 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50509338)
|
研究分担者 |
内山 愉太 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (00710766)
徳山 美津恵 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80363951)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 世界農業遺産 / 地理的表示 / 地域団体商標 / 地域認定 / 産品認証 / 伝統的産品 |
研究実績の概要 |
本年度は、世界農業遺産認定地域の自治体戦略の定量的分析を実施し、能登地域の伝統的産品への地域認定の影響に関する解析、比較対象地域(国東)での調査等を行った。国際学術誌での論文の発表や書籍の出版も行い、最終的に8編の査読付き論文を発表した。能登地域の伝統的産品についての解析では、産品の最新の購買データを基に分析を行ったところ、地域認定自体の産品の購入量や価格に対する影響は限定的である可能性が示唆された。解析結果は国際学術誌に投稿し、本報告書執筆時点で採択された。能登地域等における調査結果の位置づけを考察するために、世界農業遺産認定地域の国東半島・宇佐地域を対象に、伝統的な産品と景観を活用した観光戦略について明らかにした。なお、同地域を対象とした研究は、大分県の調査研究助成事業に採択された。本報告書の執筆時点で気候変動適応の観点を含めた調査分析結果を国際学術誌に投稿している。 成果還元では、環境省(中部地方)の気候変動適応策に関する事業の分科会の座長あるいは環境省の次期生物多様性国家戦略研究会メンバーとして、自治体関係者向けの適応策、生物多様性の戦略について定量的分析を含めて、「地方議会人」や「自治研」の各誌に成果を発表し、自治体向けのセミナーおける招待講演も行った。日本学術振興会の連携会員(環境学)としても還元を行った。前年度に引き続き、生物多様性保全の国際プロセス(IPBES等)への貢献も行った。 地域認定制度の活用に関わる都市・農山村連携の観点からは、森林環境譲与税を活用した取り組みについて全国の都道府県を対象に調査を行った結果を取りまとめた論文が採択された。また、都市・農山村連携の具体例に関する短報を発表した。新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、行政、事業者等からフィードバックを得て進める考察を次年度に行うこととして、自治体との連絡調整等も進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、研究計画の延長を行ったが、フェイスシールドや換気を含む最大限の対策を取ったかたちで現地調査も一部行うことによって、成果の取りまとめや論文出版等は進められており、おおむね順調に進展している。伝統的産品の購入量や価格に対する地域認定の影響に関する考察は、これまでに実施した分析に対して最新のデータを付加して解析を行ったものであり、これまでの結果と整合性があり、かつより長期的なデータを用いている点で地域認定の影響の検証を強化することができた。最終的な提言の形成に向け、行政、事業者等からのフィードバックの取集を部分的に進められた。オンラインによる調査では技術的な問題を含め、対面での調査と比較してフィードバックの取得に困難な部分があることが把握されたが、状況を注視しつつ、情報収集と分析を進め、論文等の形で成果を発表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
各地域における認定活用の戦略への提言の取りまとめに向けて、新型コロナウィルスの感染拡大の状況も注視しつつ、オンラインでの調査も併用しながら、現地調査を行う際には最大限の対策を取って実施する。世界農業遺産等の地域認定に対する観光分野のニーズ等も、感染拡大の状況下において変化しつつある。そのような状況を考慮しつつ、これまでの調査研究の成果の取りまとめ及び発信を進めることによって、学術的な貢献を行うとともに、現場の対応においても有用な示唆を提供することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、成果の取りまとめのための補足調査等を次年度に実施することとした。計画としては、予定されていた調査及び論文出版等を行う。
|