このテーマの研究期間中に得ることのできたインタビュー、現地で入手した事業資料、写真などの見直しをおこなった。これは本研究に引き続き申請が認められ、共同研究者も同じ体制で採択された科研(コロナが農村観光に与える影響)においても、「コロナ以前」の農村観光の状況の貴重な資料だと見なし得るからである。新型コロナ肺炎蔓延が観光事業者に与えた影響はきわめて大きく、それは観光的要素を含んだ事業をおこなってきた第一次産業事業者にとっても同様である。ある意味「コロナ以前の農村観光」に完全に回帰することはあり得ないと考えられるため、コロナが農村観光に与える影響を通時的な比較で考えるためにも、もはやこれからでは入手できない資料群だと考えられる。そうした点も鑑み、最終年度であるR3年度には、質的分析に優れた解析ソフトを購入し、その使用例の検討、本研究資料の分析について学習と検討を行った。 令和2年度までの調査で、農山村における異業種連携の媒介者的機能を果たす組織として、農山村に近年あいついで設立されているコワーキングスペース、その多くは自治体が関わっている、の存在や重要性を見いだしてきた。令和3年度は奈良県内を中心にそうした施設についてすでに収集した資料に基づく考察や、いくつかについては再度インタビューと現地訪問を行なった結果、「旅住」という概念を新しく造語することができた。これは、近年、よく用いられる関係人口という言葉がやや行政用語的であり、実際にそうした人々が果たす異業種連携的(媒介的)機能が見えない点、さらにそうした媒介的機能を果たす当事者の内的動機(心性)を端的に表現するための造語であり概念である。
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