研究課題/領域番号 |
17K02121
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
大西 律子 目白大学, 社会学部, 教授 (50337630)
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研究分担者 |
富澤 浩樹 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (60348315)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 観光まちづくり / 観光まちづくり学習 / ワークショップ / 人材養成 / 着地型観光 / 観光情報 / オーラルヒストリー / デジタルアーカイブ |
研究実績の概要 |
本研究の第2段階(30年度)では、以下の4つの研究課題を中心に取り組んだ。 1.「ワークショップ(以下、WS)」及び「WS実践者」に関する学術的知見の整理(海外文献編):〈観光まちづくり〉〈観光まちづくり学習〉〈WS・ファシリテーター〉及び隣接領域における海外文献を収集・分析し、そこから得た知見を、本研究全体の構成・手順の総合的検討や今後の個々の研究課題の分析枠組み・視点の検討に援用した。 2.観光まちづくり学習におけるWS実践者へのインタビュー調査(1年目からの継続課題):1)1年目に立ち上げた「WS実践知研究会」(10年以上の実績を有する5名の上級実践者より構成)のうち残り2名を対象に、①過去に主導した「観光まちづくり学習を目途とするWS」の概要と特徴、②WSの設計から運用に至る過程の実際の段取り・差配事項とその過程で必要とされる能力・技術・専門性、③WS実践知を獲得してきた経緯(ヒストリー)等について、オーラルヒストリー方式を交えたインタビュー調査を行った(1年目・2年目で計5件)。2)上級実践者に加え、中級実践者(5年以上の実績を有する実践者)に対しても上記同様のインタビュー調査及び実践記録の分析を行った(3件)。 3.上記の2で聴取した「観光まちづくり学習WSの実践事例」等の記録化(1年目より継続):着地型観光、視察型観光、スポーツ型観光等の各分野で、担い手育成を目的に主導されたWSの実践事例等について、主に、その企画・運用プロセスに関わる音声データや資料を入手・整理し、観光まちづくり学習WS実践事例等の記録化を進めた。 4.WS実践知研究会の運用と総合的検討:研究会では、上記の1~3までの内容を共有した上で、①WSの設計から運用に至る過程で駆使される専門性・思考性等の検討、②WS実践知の学習過程の検討、③WS実践者の全容/固有性・要件等を捉える枠組みの検討、等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記評価の理由は、以下の2点である。 1.観光まちづくり学習におけるWS中級実践者に対するインタビュー調査の実施の遅れ:研究計画の2年目では、観光まちづくり学習を目途とするWSの企画・運用に一定の経験を有する中級実践者に対するインタビュー調査(個別/グループ)を10名程度を目途に実施する予定であったが、1年目に実施予定だった上級実践者を対象としたオーラルヒストリー方式を交えたインタビュー調査を優先したため、3名を対象に個別インタビューを実施するに留まった。但し、上記の上級実践者を対象とするインタビュー調査から、①対象者各々が過去に主導し、一定の成果をあげた「観光まちづくり学習WS」の概要と特徴、②そのWSの設計から運用に至る過程の実際の段取り・差配事項とその過程で必要とされる能力・技術・専門性、③WS実践知を獲得してきた経緯(ヒストリー)等について詳細かつ有用な質的データを入手し、記録化を進めることができ、この点は、研究会での議論・検討を活発化させるのに十分な成果であったと捉えている。 2.WS実践者の基本要件の抽出・体系的整理/WS実践者のモデル・育成指針・育成パイロット講座の検討の遅れ:本来であれば、2年目では、①先行研究で得た知見の整理、②WS中・上級実践者に対するインタビュー調査とその分析、③WS実践知研究会における①と②の総合的検討等を踏まえて、1)WS実践者の全容を〈専門性・実践知・熟達化過程等〉から体系的に整理した上で、2)WS実践者のモデル化と育成指針を検討し、WS実践者育成パイロット講座を設計する予定であったが、上記の①、②の進行を優先せざるを得なかったため、1)、2)については着手はしたものの、遅れが出ている状況である。この点は次年度の継続課題と捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、主に以下の3つの研究課題を進める予定である。 1.観光まちづくり学習WS中級実践者に対するインタビュー調査(個別/グループ):前年度に引き続き、WS中級実践者を対象とするインタビュー調査(個別/グループ)を、①WS実践者として必要と認識する専門知識・能力・技術・思考、②WSに対する基本的姿勢・価値観、③WS実践者の要件、④WS実践の心得・伝承事項、⑤WS実践知の獲得過程・経緯等に着眼して実施する。また、上記調査を補完する意図から、対象者から提供されたWS実践記録(映像、音声、メモ等の質的データ)の分析を行う。 2.観光まちづくり学習WS実践者の基本要件の抽出・体系的整理及びWS実践者の〈モデル〉〈育成指針〉〈育成パイロット講座〉の検討:これまでに実施してきたWS中・上級実践者に対するインタビュー調査の総合的分析と、実践知研究会での多角的検討を踏まえ、①観光まちづくり学習WS実践者の〈専門性・基本姿勢・実践知等〉を捉えた上で、基本要件の抽出と体系化を図り、②WS実践者の〈モデル化〉とWS実践者育成のための〈指針〉を検討するとともに、③〈モデル〉と〈指針〉に基づく〈WS実践者育成パイロット講座〉を設計し、④パイロット講座を、観光まちづくり学習WS初級実践者を対象に試験的に運用する、また、⑤その設計・運用プロセスで採取した量的質的データの分析結果に基づき、その有用性の検証と評価を行う。 3.上記の1、2の検討結果を踏まえて、WS実践者育成包括プログラム(地域の現場で導入できる〈WS実践者モデル〉、〈育成指針〉、〈育成講座〉)を提案するとともに、これまでの研究成果をとりまとめ、関係学会等で発表する。加えて、WS実践者育成包括プログラムの概要をリーフレット等に集約し、地域の現場へ提供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成30年度は、①観光まちづくり学習を目途としたWS中級実践者のインタビュー調査(個別/グループ)とその分析(実践知研究会での検討を含む)、②実践者の基本要件の抽出・体系的整理/WS実践者の〈モデル化〉・〈指針〉・〈実践者育成パイロット〉の設計、の主に2点の研究課題について「やや遅れ」がみられたため、当初、使用予定であった、①WS中級実践者に対するインタビュー調査(個別/グループ)のための出張費、音声データの文字起こし作業費、データのアーカイビング処理のためのソフト・ハードの購入費、②WS実践知研究会の運用費(機材、交通費、資料費、研究会での事例検討及び議論等に関する音声データの文字起こし作業費)等において、次年度使用額が生じる結果となった。 (使用計画) 平成30年度の残額は、上記の通り、①WS中級実践者に対するインタビュー調査(個別/グループ)のための出張費、音声データの文字起こし作業費、データのアーカイビング処理のためのソフト・ハードの購入費、②WS実践知研究会の運用費(機材、交通費、資料費、研究会での事例検討及び議論等に関する音声データの文字起こし作業費等)等に充当する予定である。さらに、WS実践者育成パイロット講座の運用に関わる諸経費、研究成果(特にWS実践記録等)の発表に伴う諸経費等の補足にも充当予定である。
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