研究課題/領域番号 |
17K02128
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
五艘 みどり 帝京大学, 経済学部, 准教授 (00508608)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ルーラルツーリズム / 農村観光 / 南チロル / アグリツーリズモ / 京都府和束町 / 農村女性 / 幸福度指標 |
研究実績の概要 |
本研究は、農村部において観光産業を導入したことで、地域住民の生活および幸福度や満足度といった意識がどのように変化したかを、イタリアと日本におけ る調査を通じて明らかにすることを目的としている。また本研究は農村の持続的な維持の方法を明示することを将来的に目指すものである。農村の持続にはその人口を維持する上で若年女性の存在は欠かせないため、農村観光導入を経ての生活・意識の変化について、特に農村女性に焦点を当てて考察することとした
令和元年度は、(1)南チロルの農村観光を通した女性の生活や意識の変化の分析、(2)農村観光における農村女性の幸福度指標の検討、(3)京都府和束町において農村観光に関与する女性へのインタビュー調査、を実施した。
(1)は、平成29~30年に実施した調査結果を踏まえて、南チロルの農村観光における女性の役割に注目しながら、彼女達の生活や意識の変化について分析を行った。分析においては統合型ルーラルツーリズム理論における「7つの特徴」(Barcus, 2013)を用いた。結論として、①南チロルでは農村観光を通して女性が多様なネットワークを構築あるいは関与し、②観光業のみでなく農業へも貢献し、その過程を経て、③既存の価値観や意識を変化させ、地域の愛着心の再認識や、次世代の価値観にも影響を与えた、ということを明確にした。この成果は博士論文に取りまとめた。(2)は、南チロルの農村女性の分析を踏まえて、農村観光に関わる女性の幸福度指標の検討を行い、社会的・環境的・経済的・文化的側面から16指標を設定した。成果は第34回日本観光研究学会で発表をした。(3)は、京都府和束町で農村観光に関わる女性8名および農村組織へのインタビューを実施し、調査結果を取りまとめている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初3年で終了予定であった本研究であるが、補助事業期間を延長しており、令和2年度に調査や分析の必要性が発生している。 (1)京都府和束町での調査実施の遅延 令和元年度は、前半に京都府和束町における農村女性への調査実施を予定していたが、京都府和束町側の調整役の方の事情で年度後半のインタビュー実施が望ましいこと、また、こちらとしても海外調査の分析終了後の国内調査実施の方が、その後の日伊比較分析への導入が円滑になり望ましいことから、京都府和束町で予定していた国内調査の実施時期を後半に設定した。これにより全体的な研究スケジュールに半年の遅延が生じた。 (2)新型コロナウィルス問題による海外調査の延期 南チロルの分析結果は、令和2年2~3月に共同研究先である南チロル農民連合のレッド・ルースターと意見交換を行い精査する予定であったが、新型コロナウィルス問題が浮上し、現地調査が当面不可能となったた。本調査は、令和2年度の12月以降に実施すを予定している。これにより全体的な研究スケジュールが(1)と合わせて1年の遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の前半は、京都府和束町で実施した農村女性への調査結果の取りまとめを行い、農村観光をを通して女性達にどのような生活や意識の変化が起きたのかを分析する。京都和束町の調査や研究においては、著者には10年以上の蓄積があるので、農村観光の変遷に照らし合わせて農村女性の変化を分析することに重点を置きたいと考えている。
令和2年度の後半は、農村観光を通して女性に起きた幸福度の変化を、南チロルと京都府和束町の分析を比較しながら明らかにする。日本とイタリアの農村観光は政治や社会的背景の違いから、互いの施策を安易に導入することも、また未整備な部分を批判することもできないが、南チロルの詳細調査地域であるサン・ジェネジオ村と京都府和束町は、人口規模、農業経営手法、観光業参入から現在までの期間等が類似しており、農村女性の変化を比較することは十分可能である。国や自治体による法制化を受けてイタリアの農村観光は日本よりも発展しており、そのイタリアに照らし合わせて日本の農村観光を見ることで日本の課題も明らかにされると考えられるのである。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は京都府和束町と南チロルで調査実施予定だったが、和束町ではインタビュー先の農家との調整をする和束町の担当者の方が諸事情で多忙となり、実施時期が延期された。またイタリアの最終調査も予定していたが、新型コロナウィルスの発祥で渡航が難しい状況となり中止とした。このため、国内外の両方の調査および比較研究が令和2年にずれ込む見通しとなり、研究を延期した。このため科研費において令和元年度に使用予定であった旅費は次年度の使用とし、イタリアと京都府和束町の調査旅費や、論文投稿や学会発表等の成果発表に関する費用に充てる計画である。
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