研究課題/領域番号 |
17K02128
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
五艘 みどり 帝京大学, 経済学部, 准教授 (00508608)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ルーラルツーリズム / イタリア / 南チロル / 農村女性 / アグリツーリズモ / 京都府和束町 / ネットワーク / エンパワメント |
研究実績の概要 |
本研究は農村部に観光産業を導入したことで、地域住民の生活および幸福度や満足度といった意識がどのように変化したかを、イタリアと日本の調査を通して明らかにすることを目的にし、農村の持続における方策を明示することを目指すものである。
令和2年度は新型コロナウィルス問題から予定していた国内外の調査が実施できず、調査計画を変更し、新型コロナウイルスによるイタリアの観光産業や観光政策への影響の調査を実施した。調査はイタリアに広いネットワークをもつ国内旅行業者の協力を得て、オンライン・インタビューで実施した。
調査で明らかになったことは次のような内容である。まず、イタリアは欧州で当初最も新型コロナウィルスが拡大し、感染防止における劣等国のイメージを世界に与えたが、その後の首相のトップダウンによる早急なロックダウンや、感染度別の州別対応とそれに呼応する州自治体の取り組みを経て、欧州内では感染度合の落ち着いた国となっていった。また、新型コロナウィルス問題は、観光が基幹産業であるイタリアに大きな経済的打撃を与えたが、ロックダウン緩和後の国内観光の動きとして夏のバカンス・シーズンを見ると、ルーラルツーリズムが盛んに行われたことがわかった。つまり、農村部における観光業のレジリエンスの高さが明確になった。さらに、農村部では、これまでに認知されていなかった奥まった地域の観光資源まで観光客が出向くようになり、新たな観光資源が発掘される機会となった。イタリアでは観光施設やレストランでのデジタル化が義務付けられた結果、農村部の観光においてもeチケットやレストランメニューのQRコード化など、デジタル化が進んだ。これらの研究成果は、日本観光研究学会の新型コロナ・特別プロジェクトのワークショップで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度の2月頃に実施予定の調査が新型コロナウイルス問題下で実施不可となり、令和2年度に実施予定であったが、令和2年度も実施不可となり、調査設計の変更が余儀なくされたため、進捗が遅れている。
しかしながら、イタリアにネットワークを持つ国内旅行事者を協力者として、オンライン・インタビュー調査を9月-11月に期間限定で実施することが可能となり、当初予想していなかった新型コロナウィルスがイタリアの観光産業と観光政策に与えた影響およびルーラルツーリズムにおけるレジリエンスについて明らかにすることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、これまでの研究成果のまとめとして、イタリアと日本においてルーラルツーリズムの主要な担い手となっている農村女性に焦点を当て、ルーラルツーリズムが生み出したエンパワメントについてとりまとめを実施する予定である。
イタリアの農村女性は、ルーラルツーリズムへの関与を経て、多様なネットワークを構築し、あるいは組み込まれて、「自信・自己肯定感」「生活への安心感」「社会生活範囲の拡大」「地域への誇りの増大」「集団・組織の強化」といったエンパワメントを生み出したことが明確にした。本成果は論文として投稿し、現在は査読の段階にある。
令和3年度は最終年度として、これまでに実施した京都府和束町の調査結果とイタリアの調査結果を比較しながら、農村女性生活および幸福度や満足度といった意識がどのように変化したかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス問題により令和元年度2月と令和2年度中の国内外調査が実施不可となたっため、調査に関する旅費分が次年度使用額となった。
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