2022年度は8-9月にイタリアにおけるルーラルツーリズムの調査を継続的に南チロル県で実施し、コロナ禍から回復期にある地域の状況について、ルーラルツーリズム推進組織のルーター・ハンへ聞き取り調査を行った。また、コロナ禍に開業したアグリツーリズモへの聞き取り調査を実施した。2022年は研究の最終年度で日本とイタリアの研究に一定の成果がでたこともあり、今後の研究の発展に向けて、イタリアに隣接するフランスとの比較を行うこととした。そのため2月にフランス農業祭に参加しルーラルツーリズム推進組織へ聞き取り調査を行った。フランスとの比較は西欧におけるイタリアのルーラルツーリズムの位置づけを明確にするのみでなく、日本に対しルーラルツーリズムの新たな視点を示唆すると考える。これらの成果は2023年度の日本観光研究学会でワークショップで発表すべく準備を進めている。
本研究は全期間を通し、農村の観光産業化における住民幸福度の変化に関する日伊比較というテーマで研究を行い、①幸福度指標の抽出、②幸福度指標の一つである「エンパワーメント」を軸にしたイタリア・南チロルと日本の京都府和束町の比較、③②の比較を通した日本のルーラルツーリズム実施地域側にある課題、を明確に示した。成果報告はWorld Agritourism Congressや日本観光研究学会など国内外での学会発表、地域活性研究など査読論文の掲載のほか、著書(分担執筆・2冊)や専門誌への掲載を通し、学者のみならず実務者向けにも行った。これは各地でルーラルツーリズム勉強会の講師を行うことに繋がり、農林水産省や自治体の政策立案に影響もを与えるようになったことから、研究成果が社会貢献に繋がったと言える。本研究は継続研究(21H03721)に引き継ぎ、フランス・オーストリアなどへ範囲を広げながら発展的研究を進めていく予定である。
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