令和元年(2019)年度は、熊本県阿蘇地域周辺を対象に①熊本地震からの復興プロセスと多様な主体による創造的復興の取り組み、②先人が自然と共生してきた暮らしの知恵や地域文化を防災教育の素材として評価した復興マメジメント手法に関する2017年度からの3年間のデータをとりまとめ、研究課題の検証を行った。続いて、研究成果を国内外のジャーナル・学会に発表した。 ①熊本地震からの復興プロセスと多様な主体による創造的復興の取り組みでは、熊本地震による阿蘇地域の生活面や観光面からみた影響は、農業被害や団体観光客の減少による観光被害等が顕著であった。一方で、復興における観光の役割を創造的復興の取り組みから考察すると、これまでの観光は生活再建が優先され、特に復興計画の初期段階でその位置づけは高くなかった。しかし、阿蘇地域の住民、コミュニティ、団体等各主体による独自の生活再建は、生存確保の時期(災害から10日間)、生活確保の時期(災害後から一月)、生計の確保の時期(災害時から3か月)からみられた。特に、各主体による独自の生活再建は、行政等では支援しきれいない対象への迅速な支援を可能としていた。さらに、多様な主体による各主体の取り組みは復興期まで継続されやすく、且つ、その取り組みが観光や交流、防災教育へと新たな地域再生の活動に展開する経緯が明らかになった。 ②先人が自然と共生してきた暮らしの知恵や地域文化を防災教育の素材として評価した復興マメジメント手法に関する調査研究では、阿蘇地域の災害や自然・農業に関する伝承から防災を考える学習を通じ、児童が地域への愛着や復興にむけた社会参加への意欲が高まり、研究成果を地域コミュニティに発信した。研究の展望としては、過去の歴史や地域文化から学ぶ防災教育が、地域コミュニティによる災害リスクマネジメントや地域防災へと展開することが示唆され、その方法論を提案できた。
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