研究課題/領域番号 |
17K02132
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
藤稿 亜矢子 東洋大学, 国際観光学部, 准教授 (20732754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域主体(コミュニティベース) / 自然保護 / エコツーリズム / サステナブルツーリズム / コミュニティフォレストリー |
研究実績の概要 |
まずカンボジアの森林減少の推移をGISデータを用いて可視化し、その状況と調査地であるCBETサイトとの位置関係を把握した。また、これまで集めた文献、二次的資料、現地資料等から、カンボジアの自然保護に関わるCommunity-based approaches(コミュニティを主体とした施策)の歴史的推移と現状を整理した。 さらに、昨年度までのフィールド調査(参与観察、インタビューなど)で得られた情報を元に、CBETに関わる地域コミュニティとエコツーリズムの持続可能性を測るいくつかの指標を設定した。それらを元に、対象としたCBETサイトにて、地域住民にアンケート調査を実施し、CBETの導入によって、地域住民の収入や意識がどのように変化したか、その結果、自然保護(主に森林破壊と野生生物の違法取引)に寄与があったかどうかなどについて検証した。その結果、調査対象としたCBETサイトでは、1) エコツーリズムは副業ではあるが収入増に貢献しており、特に女性を中心とした地域住民の生活向上に役立っていた、2) エコツーリズム導入による環境教育的効果が、地域住民の森林保全意識を向上させていた、3) エコツーリズム施策の導入が、地域コミュニティ内のつながり(ソーシャル・キャピタル)を醸成しており、その結果、ルール作り、相互監視などがうまく行われていた、4) これらの相乗効果により、コミュニティ内での違法伐採、違法狩猟などは激減した、といったことなどが明らかとなった。一方で、GIS上の情報からは、以前より森林が増大したというところまでは認められず、むしろ、減少している部分もあった。地域住民へのインタビューによると、コミュニティ外(近隣村落、あるいは町)から、侵入して木を切っている人がいるとのことであり、CBETでは解決しきれないあらたな外部要因が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目には、サステナブルツーリズムという概念およびその実践に関わる、国内外の既往研究、行政資料を収集、レビューし、その結果を書籍としてまとめることでサステナブルツーリズムの方法論を総括した。また、サステナブルツーリズムの持続性を評価するために、対象としたカンボジアにおけるCBETの現状(政策や課題)、および自然保護上の課題を整理し、それらの情報を元に実証調査対象地を絞り込んだ。 今年度は、こうした結果を適用しながら、CBETサイト2か所をフィールド調査し、さらに具体的な現場での課題、持続可能性の評価、といった実証調査を行った。このように、サステナブルツーリズムの概念と方法論の整理→それを元にした実証調査といったプロセスは、計画通りに実施できている。一方で、大きな課題は、カンボジア現地における行政資料、公的情報、信頼性のある既往データなどが圧倒的に不足している点であり、これらは、研究の実施に多少の遅れをもたらしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の最終年度となるため、これまで収集したデータや資料を再整理した上で、不足していると思われるデータを取るために、最後のフィールド調査を行う予定である。その上で、投稿論文として結果を公開する。 また、特に1年目に構築したサステナブルツーリズムの方法論、2年目に実施した持続可能性評価の実証調査、といった結果を集約して、広く一般に公開するために、シンポジウムなども行う予定である。その際には、海外から同様の研究を行っている研究者を数名招聘し、活発な議論を行うことで、今後のサステナブルツーリズム研究への寄与を目指す。また、国際機関、行政、観光事業者などの主要ステークホルダーとも情報共有を行い、サステナブルツーリズムの実践に向けた、より具体的な施策を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度最後の現地調査出張を、3月後半に行ったため、時期的な問題(期末)から、これらの出張費精算を、次年度に行う。
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