最終年度においては、エコツーリズムをマングローブ林の保全とコミュニティの生計向上に役立てている地域を新たに訪問し、現地調査を行った。1回目の事前調査は、昨年度末(2019年3月)に実施しており、2019年9月に再訪問し、実証調査を実施した結果、地域住民の生計が向上していること、エコツーリズム観光客との交流による地域住民の意識向上があること、それらによって、マングローブの保全へのインセンティブが存在していることがわかった。一方で、政府による大規模な観光開発計画に当該地域も含まれるリスクが出てきており、それによってCBETは強制的に終了させられる可能性もあることが新たな課題として抽出された。また、2019年10月には、ミャンマーのインレー湖周辺で実施されているCBETを訪問しカンボジアの事例と比較調査したが、特に、女性の地位向上(エンパワーメント)に貢献していることが示唆された。 研究期間全体を通して、タイプの違う5つのCBETを訪問して調査したが、成功しているところ、持続可能性が危ういところなど、さまざまな事例があった。全体的に成功要因としては、利益配分システムがコミュニティ内で平等なものとなっている、地方行政の後ろ盾がある(金銭的支援はないが)、積極的に関与する若者がコミュニティ内に存在する、などがあげられる。一方で、あまり活性化していない、あるいは縮小しつつある要因としては、地域住民全体の意識の向上がなされていないなどの内部的要因、あるいは行政側による強制的な開発、コミュニティ外の侵入者による自然破壊など、外部的要因の双方が認められた。しかし、いずれのケースにおいても、地域住民の「意識の向上」は見られ、エコツーリズムによる環境教育的効果が示唆された。このことから、今後の研究において更に、「環境教育への貢献としてのエコツーリズムの効果測定」などを視野に入れていきたい。
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