令和4年度は、前年度に引き続き、研究対象地の済州島における新住民と旧住民によるコミュニティの仕組み及び観光業の現状の把握に努めてきた。2023年2月に行った現地調査では商業施設の空間分布の確認や、地域コミュニティに関する都市移住者と地域住民の間の意識調査が行われた。 調査の結果、①商業施設が増えていく中、既存のカフェ、ゲストハウス等に加えて土産店や雑貨店等の増加が目立った。②その増加とともに空間分布はより内陸部へ広がっていることが分かった。③月汀集落の地域コミュニティに対する地域住民と都市移住者の意識に相違が見られ、両者の間には協力、交流等はなかなか行われていないことが分かった。 舊左邑月汀集落における調査結果としては、以下のようにまとめられる。 ①都市移住者による月汀集落の観光業の発展は著しく、カフェ、レストラン、ゲストハウスなど商業施設の増加から分かる。また商業施設の立地については、海岸沿いに開業した上で内陸部へ少しずつ拡大していったことが分かった。その際、内陸部においては耕作地が台地へと地目変更が行われたことである。 ②都市移住者と地域住民の間には葛藤が生じている。都市移住者の増加を不安に思う地元住民側の意識は、都市移住者をより周辺化させることであった。これは都市移住者による観光業が地元住民の助けを要しない業種であることが大きいと考えられる。かつ都市移住者の中、転入届を出さずにただ商売のために臨時的に居住地を変える移住者が増え、この場合はより地域コミュニティへの意識が薄くなる。 総合的にみると、月汀集落の観光地化は都市移住者の主導で行われており、都市移住者と地域住民による地域コミュニティは順調でないことである。
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