タイのコミュニティ開発は従来、コミュニティ全体を対象とするものであり、オンサイトの開発では、土地分有事業や区画整備等を応用した様々な手法がコミュニティの状況に応じて展開されてきた。これに対し、小規模住民組織(SG)を単位とした開発手法は、都市貧困層コミュニティに対する住環境整備事業を円滑に行う目的で新たに2003年に導入されており、いわばコミュニティ開発を遂行するためのツールとして位置づけることができる。本研究では、こうしたコミュニティ開発でみられる「目的遂行型SG」の事例や、コミュニティベースドツーリズム(Community Based Tourism:CBT)等でみられる「テーマ型SG」の事例比較を通したSGの特性を明らかにし、計画論的視点からその有効性について分析している。最終的には、アジアにおける小規模住民組織を通したまちづくりの手法を構築することが本研究の目的である。 2021年度は最終年度として新型コロナウイルス感染症による影響により研究期間を延長して実施している。タイでの現地調査は、新型コロナウイルス感染症の影響により中止せざるを得ない状況だったが、余暇ツーリズム学会と日本都市計画学会の全国大会への参加及び、文献調査を実施することができた。また、これまでに得られた知見については、2021年12月11日に開催された日本公共政策学会関西支部第69回例会にて「タイにおけるコミュニティベースドツーリズムの展望-小規模住民組織を単位としたコミュニティ開発手法より-」として成果報告を行った。
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