研究課題/領域番号 |
17K02147
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
乾 弘幸 九州産業大学, 地域共創学部, 教授 (50299400)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 物語化 / ホスピタリティ行動 / 出会い / 集客の本質 / オーバー・ツーリズム |
研究実績の概要 |
2018年度においては、下記の事項を実施した。 ・第1年度(2017年度)において確認した「物語論」、「経営における物語分析」および「ホスト-ゲスト間でのやりとりでのホスピタリティの提供行動」などに関する既存研究を基に、本年度に実施した企業への聞き取り調査との整合性を確認した。聞き取り調査を実施した企業は国内および外資系ホテル企業(ともにラグジュアリー・カテゴリーに分類されるホテル企業)とクルーズ運営会社である。この聞き取り調査では、既存研究では語られていない指標を見いだすことができ、新たな視点での分析、考察の示唆を得た。 ・ホスピタリティ提供に関わる企業への聞き取り調査とともに、観光者への聞き取り調査も同時に実施した。北海道新千歳空港、羽田空港、福岡空港、およびこれらの空港周辺にある観光地、観光施設を訪れる外国人観光者(欧米・アジア・オセアニア等)に対して、日本での「もてなし」への期待や経験評価について調査した。この聞き取り調査では、これらの観光者を受け入れる地域や企業の政策や集客戦略が必ずしも外国人観光者の意識や評価とは一致していないこともあり、観光の物語化という点においては受け入れ姿勢に伴うホスピタリティ提供行動を再考すべきであるという知見を得た。 また、現在の日本は「オーバー・ツーリズム(観光過剰)の状況も見受けられ、この現状が観光者にとっての「物語化」を阻害している部分もあることも認識させられた。
以上のように、本年度はフィールド調査を実施した結果、既存研究と現実的な地域やホスピタリティ提供企業の集客戦略、加えて、観光者の意識と評価とは必ずしも一致しないという結果を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聞き取り調査等のフィールドワークもほぼ順調に実施しており、おおむね順調な進捗であると考えている。最終年度(2019年度)に向けた研究成果の基礎的なデータを得ることができている。また、これまでの研究過程から2018年度に実施する予定であったインターネットによるより広い範囲での調査を最終年度における補助・追加調査とした方が良いと判断としたために、このデータを今年度(2019年度)に取得する予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2019年度では、これまで聞き取り調査等によって得たデータに加えて、広くインターネットによる調査を行い、その要因抽出の範囲を広げることで精緻化を図る。その後に、文献レビューから得た論理とそれぞれの調査から得たデータとの整合性を確認し、それらの結果から研究成果へと導いていく。 第1年度および第2年度の研究過程から得た観光ビジネスからの提供経験と観光者の経験からの印象が物語化を促進し、かつ「人的な要因」によることが大きいという因子がホスピタリティ行動の生成過程においてきわめて重要な要因となることを論理的に解明することを最終的な研究成果として論じていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来ならば、第2年度に行う予定であった広範囲を対象としたインターネットによる調査をこれまでの研究プロセスにおいて最終年度に行うほうがより整合性のある結果を導くことができると判断したため。 第2年度においての企業および観光者への対象を絞り込んだ訪問聞き取り調査結果を基にしてインターネット調査を実施することで、要因をより精緻化できると判断し、今年度(2018年度)の調査にかかる費用を最終年度の2019年度に移行する。
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