本研究は、本来ならば2019年度で終了予定であった本研究がCovid-19感染拡大のために最終的なデータ取得と確認ができなかったことで研究期間を延長することを余儀なくされ2020年度を最終年度とすることになった。 最終年度では、これまでに聞き取り調査及び大規模なWeb調査等で得たデータと既存研究との理論的整合性を確認すると共に、調査結果から抽出した「物語化」の新たな要因となる「贅沢」という概念を加えながら本研究の最終的な結論部分の検討を行った。 物語化を創造するホスピタリティ行動はホストとゲスト間で生ずる本質的な人的交流や社交的行為から「個人的な伝説」を形成する要因となると同時に、観光者自身が体験する贅沢行動も非日常的な消費行動として物語化に対する要因となり、その行動を自身の経験消費としての印象を長く留めておく傾向にあるということを解明した。個別的な贅沢の範囲や内容には差が生じるが、概ね日常生活での経験を超える購入費用や内容による経験的印象が「旅での物語」として記憶に留められており、特にクルーズ旅や豪華ツアー、ラグジュアリークラスのホテル宿泊、訪問した観光地での郷土料理などでの経験が多数を占めている。ただ、これらの「購入費用」だけではなく、対応する従業員の「金額に見合う対応や配慮」という行動評価が含まれていることも指摘しなければならない。 本研究で得た成果と新たな命題の発見を、採択内定している2021年度(令和3年度)からの科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金) 基盤研究C「観光の場における贅沢市場の研究」において引き続き追究していきたい。
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