研究課題/領域番号 |
17K02150
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
平松 燈 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (30725255)
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研究分担者 |
米田 耕士 熊本学園大学, 経済学部, 講師 (20547442)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 訪日外国人 / 経済効果 / 地方経済の衰退 / 新幹線 |
研究実績の概要 |
訪日外国人の増加により、日本経済の活性化が期待されている。背景の一つには人口の減少があり、人口減少による消費需要の減少を、訪日外国人の消費によって埋め合わせるという期待もある。人口減少は日本全国で均一的におこっている訳ではなく、地方経済で人口減少が大きい。一方で首都圏を代表として、一部地域では人口の増加が見られる。このように、人口が減少している地方経済でも訪日外国人に対する期待も大きい。そこで本稿では、複数地域からなる応用一般均衡モデルによるシミュレーション分析を行い、訪日外国人が日本の各県へ与える経済的影響について研究する。その結果、短期的には日本全国で経済が成長することが示された。ただし、経済成長は訪日外国人が多く訪問する都市部で大きく、そうではない地方経済では成長は小さい。その結果、長期的には、地方経済から都市部への人口移動が発生し、経済が活性化している都市圏では建物の建設も進むことが示される。都市部ではさらに経済が成長する一方で、地方では経済が衰退する地域も出てくることを示した。 また、九州新幹線の開業が沿線市町村の人口に及ぼした効果について分析した。市町村固有効果および時点固有効果のほか、新幹線以外の鉄道へのアクセスや地形的要因等をコントロールの上、difference-in-differences 推定を行った。その結果、九州新幹線全線開業により新たに新幹線へのアクセスを得た市町村では、2010 年と2015 年の間の人口変化率が有意に高いことが示された。この結果は、九州新幹線の開業が沿線市町村の人口増加をもたらした(あるいは人口減少を抑えた)ことを示唆する。本研究は今後さらに進めるより広範囲における研究の予備的考察であるが、一部は査読無し紀要に掲載され、別の一部は査読付き英文ジャーナルに掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の研究はシミュレーション分析がおおむね完了し、研究会での報告を行った。現在は論文執筆に取りかかっている段階であり、おおむね順調に進展している。分析結果はモデルに沿って説明可能な結果となっている。この研究は30年度の学会で発表する予定である。また、さらに分析を進めて、査読付き英文ジャーナルに投稿することは30年度の目標である。しかしながら、分析を行なうにあたり、本研究の対象を超えた新たな疑問が交通部門に現れたため、30年度以降の研究課題とし、引き続き取り組みたい。 また、新幹線開通による地域経済への影響について分析を進めており、研究の一部は査読無し紀要に掲載され、別の一部は査読付英文ジャーナルに掲載予定となった。この研究についても引き続きより範囲を広げて研究を進める必要を感じており、現在は分析が可能かどうか、データの利用可能生を探りつつ検討中であり、何らかの方向性を見つけドラフトを作成することが30年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究は30年度の学会報告を行い、さらに研究を進めて英文論文を作成し、査読付き英文ジャーナルに投稿することが30年度の目標である。その後、本論文では扱えなかった交通部門に注目してモデルを再構築して研究を進めることは30年度以降の課題である。 同時に進めている新幹線開通の研究は予備的考察が29年度中に掲載予定となった。本研究はさらに分析対象を広げて研究を続ける予定である。複数地域の関係と交通部門の関わりについて分析を行ないたいが、データの利用可能性を検証しているところである。何らかの方向性を含めて本研究もすすめてドラフトを作成することが30年度の目標である。また英文論文を作成し、学会発表や査読付き英文ジャーナルへの投稿は30年度以降の目標である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度計画していた旅費支出(研究打ち合せの学会発表)や人件費・謝金(英文校正など)は次年度に行なうこととなったため。
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