研究課題/領域番号 |
17K02155
|
研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
朝倉 友海 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30572226)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 論理 / 数理 / 形而上学 / 東アジア哲学 |
研究実績の概要 |
初年度である平成29年度は、研究代表者の朝倉が、複数の口頭発表を行いまた複数の論文の公刊準備を行うとともに、この研究に必要となる多分野にわたる学術的成果を消化することに集中的に取り組んだ。本研究は本格的な研究成果を出す前に準備段階を置く研究計画であったが、この準備作業について当初に予定したのとは質・量とも変更の必要性が出てきた。 準備作業は、当初は数理科学上の学術成果の把握を主とすると見込まれていた。一方、言語と論理をめぐって近代東アジア哲学に見られる意味の理論の明確化という作業は、これまでの研究代表者の研究の延長上に遂行が可能である見通しであった。後者については、実際に、西田幾多郎の場所的論理における意味の理論の位置づけや、牟宗三による仏教解釈における論理分析の位置づけの解明を進め、複数の成果発表(および刊行決定)に至った。 だが、成果発表を通して判明したのは、京都学派にせよ新儒家にせよ、またその二次研究にせよ、第二次大戦後の論理学(および分析哲学)の発展から切り離されたことによる理論的制約が大きいという事実である。西洋哲学と東アジア思想との統合という理念はこれによりいわば「過去」のものとなった。この問題点をクリアするためには、数理のみならず論理に関しても学術的進展をふまえ、東アジア哲学を解釈というより内容的に更新していく作業が必要となる。課題のこの進展は、数理科学と深く結びついた論理研究についての把握を要請するものであり、準備作業を質・量ともに拡大させる必要をもたらした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請額と比べて予算が減額されたことと、初年度に所属先の変更があったこととが重なり、当初予定していた次年度以降の研究会議の企画は順調には進まなかった。とりわけ、海外での研究交流の機会を多くもつことができなかったことは、研究計画の推進の上で、大きな障害となっている。代わりに国内での研究交流を増やすとともに、本格的な研究成果を出すための準備作業を集中的に行った。これは比較的順調に進展しているが、準備作業の質の変化とともに量的な拡大がもたらされたことにより、思ったより準備段階に時間がかかる見込みとなってきている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、初年度と同様、数理と論理をめぐる学術的成果の消化作業は継続して行うとともに、西田・田辺・牟宗三に共通に見られる「関数の哲学」を明確化するという作業に入っていく。これは、初年度に進めておいた「意味の理論」への取り組みを広く東アジア哲学を対象にすることで進めるという作業と密接に関係しているが、歴史的な関心対象としての「関数の哲学」ではなく、彼らの論理的思考をその後の論理学の進展という観点から再構成し展開するという作業になると思われる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額はその金額からして誤差の範囲である。
|