最終年度は、交流の幅を東アジア哲学関連だけでなく広く現代哲学の問題に取り組む研究者にまで広げていくことで、東アジア哲学からの新たな哲学的寄与の可能性を模索した。感染症対策の影響で活動が大幅に制限される中、これまでの研究活動の成果を口頭発表にて現代哲学に取り組む研究者へ伝えることに努めるとともに、雑誌論文または書籍の分担執筆のかたちで研究者のみならず一般読者に対しても広く公開し、さらなる議論の進展を図った。 本研究成果を含む国内での口頭発表として、「西田がいう論理とは何か」と題された発表を行い(哲学会大会シンポジウム「世界哲学の中の西田幾多郎」)、現代哲学に取り組む研究者との交流を行った。この内容はいずれ論文として公刊される予定である。海外では、台湾で発行されている新儒家研究の雑誌である「鵝湖月刊」にて「東亞哲學的理念與牟宗三:本文的意圖」を二号に渡って掲載した。これはもともと「中国――社会と文化」誌にて発表された「東アジア哲学の理念と牟宗三」に基づくもので、その要約・本文・中国語訳からなっており二号にわたり掲載された。 一般読者向けには、ちくま新書の『世界哲学史8』にて、本研究成果を反映させた第9章「アジアの中の日本」を公刊した。続けて、同書では盛り込めなかった本研究の内容を、雑誌「現代思想」にて「東アジア哲学とは何か、そして何であるべきか」として補足的に公開した。たんに内容を公開しただけでなく、『世界哲学史』出版後に行われた同書に関する連続シンポジウムにも参加することで、数理と論理をめぐる本研究の意義に対する理解を拡げるよう努め、議論を行うことができた。 以上のように様々な機会を活用して本研究による成果を広く公開することにより、様々な反応を得ることができ、本研究成果に基づく新たな展開の可能性も見えてきた。
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