研究課題/領域番号 |
17K02158
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村山 達也 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50596161)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベルクソン / 自由 / 定義 / 可能性 |
研究実績の概要 |
今年度は、主に二つの観点から研究を進めた。 第一は、昨年度からの作業の継続、すなわち、ベルクソンについての包括的な入門書の執筆を進めた。今年度には、『意識の直接与件についての試論』の解説パートと、二つある序論のうちの一つを書き終えた。『直接与件』の解説パートにおいては、同書の主たる主題である自由との関連のもと、必然性や可能性といった主題についてもさまざまな論究を行なった。また、序論においては、「実証的な形而上学」というベルクソンのプロジェクトとの関連のもと、「哲学においても、一気に決定的かつ必然的な結論を出そうとするのではなく、あくまで蓋然性を高めることを目指す」というベルクソンの企図の独自性について論じた。こうした、必然性、可能性、蓋然性といった様相は、いずれも本科研の取り組みの一環として考察を行なった。 第二は、『直接与件』をめぐる国際ワークショップに参加し、ベルクソンの自由論について英語で発表を行なった。ここでは、『直接与件』における、「自由は定義不可能である」というベルクソンの主張について、必然性、可能性、現実性などをめぐるベルクソンの考えも踏まえつつ解釈を行ない、この主張が導かれるまでの議論の再構成を行なった。この主題は、自由論のみならず、定義論、メタ哲学論、そしてもちろん様相論にも繋がる、ベルクソン哲学の解釈にとって極めて重要なものである。本研究課題の研究が開始して以来の大きな課題であったが、論文化に向けて大きな進展を見ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度にいったん延期となった国際ワークショップを英語で開催するなど、コロナによる遅れを一定程度まで取り戻すことができた。国際交流や英語での発表についてはなお停滞が見られるが、他方で、執筆についてはおおむね順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、上記の入門書の完成のほか、自由論についても、やはり上記の国際ワークショップでの発表をもとに論文を執筆する予定である。
国際交流や発表については、フランス人研究者の招聘、国際学会での発表、フランスでのセミナーの開催などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナによる交流の停滞が予想以上に長引き、国際学会や研究会などを開催することができなかったため。
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