本研究では、そもそも画像とは何かという問を巡って、現代英語圏における描写の理論を手掛かりに検討を行った。その準拠枠としたのは、イギリスの美学者R・ウォルハイムによる 絵画経験の二重性(twofoldness)という考え方である。二重性とは、絵を見る経験が、物体の表面を見る経験であると同時に、当の物体とは異なる対象を(その像を)見る経験でもあるという事実を指す。英語圏における描写の理論はこの二重性の正確な意味をめぐる多様な説明案の間の対立から構成されているとも言えるが、本研究では、K・L・ウォルトンのメイクビリーブ説に準拠しつつ、そこにどのような補完が必要かという観点から問題状況の確認を行った。
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