研究課題/領域番号 |
17K02161
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 芳久 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トマス・アクィナス / マイモニデス / アヴェロエス / 中世哲学 / 一神教 / 自然法 / 啓示 / 比較哲学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、別々の研究者によって研究されることの多い西洋中世哲学、イスラーム哲学、ユダヤ哲学を同じ土俵に乗せ、次のような三つの成果を得ることである。第一は、思想史研究の空白部分を埋め、古代哲学からイスラーム哲学・ユダヤ哲学を経てラテン・キリスト教世界に至る哲学史の多角的な再検討を行なうという基礎的研究の遂行である。第二に「自然法」と「啓示法」の相互関係に関して比較哲学的観点から考察する。第三に、現代の焦眉の課題である一神教の文明間対話に関して、共通の地平の中で文明を形成していた中世哲学の時代に着目することによって、三文明間の連続性と非連続性の詳細を明らかにし、新たな対話の可能性を見出す。即ち本研究は、哲学史的・文献学的研究、法哲学探求、文明論的対話という相互に連関した重層的な目的を有するものである。 本年度は、こうした比較哲学的研究の軸となる西洋中世哲学の代表者であるトマス・アクィナスについての単著(『トマス・アクィナス 理性と神秘』)を発表することができたのが、最大の成果である。 また、「三大一神教と中世哲学:超越と理性」(『Nyx(ニュクス)』第四号所収)という、三大一神教の比較哲学的研究の中軸に関わる論考や、イスラーム研究の世界的権威として知られる井筒俊彦とキリスト教思想との関わりに関する論考「井筒俊彦とキリスト教:存在論的原理としての愛」(安藤礼二・若松英輔編『井筒俊彦(言語の根源と哲学の発生 増補新版)』河出書房新社、2017年所収)をはじめ、六本の論文を発表することができた。 更に、思想誌『Nyx(ニュクス)』の特集「開かれたスコラ哲学」の主幹として、中世スコラ哲学の存在意義を新たな観点から分析する企画を実現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、三大一神教の比較哲学的研究に関わる1冊の単著と6本の専門論文を発表することができており、概ね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、本研究は概ね順調に進展していると評価することができるため、当初の予定通りに引き続き研究を進めていく予定である。
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