研究課題/領域番号 |
17K02162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
頼住 光子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90212315)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 道元 / 『正法眼蔵』 / 「梅華」巻 / 大乗仏教の思想 / 日本仏教の比較研究 / 修証論 |
研究実績の概要 |
本年の研究成果の発表としては、『日本仏教を捉え直す』(末木文美士氏、大谷栄一氏と共著)(放送大学教育振興会 2018年3月20日 pp.3-4. pp.27-124,263-267)、「道元における「さとり」の世界とその表現――『正法眼蔵』「梅華」巻註解の試み」(『倫理学紀要』第25輯 東京大学文学部倫理学研究室 2018年3月31日 pp.134-183)と「和辻哲郎的思想根基:「型態」與「流動」」(林永強他編『日本倫理觀與儒家傳統』、東亜儒學研究叢書25、2017年4月12日 pp.205-233)となる。 『日本仏教を捉え直す』においては、「道元と禅思想」をはじめ、「仏教伝来と聖徳太子」「空海の思想」「法然・親鸞と浄土信仰」「日蓮と法華信仰」などについて、大乗仏教思想という観点から、比較の視点も取り入れて解説した。「道元における「さとり」の世界とその表現――『正法眼蔵』「梅華」巻註解の試み」においては、『正法眼蔵』『永平広録』をはじめとする用例、『如浄録』をはじめとする引用語録、唐代漢詩の影響等についての詳細な検討をもとに、『正法眼蔵』「梅華」巻ほぼ全文にわたってに精密な注釈を施し、その思想構造を解明した。「和辻哲郎的思想根基:「型態」與「流動」」においては日本近代仏教研究に多大な貢献をなした和辻の思想の原型を解明した。 また、本研究の成果の一部として、「宮澤賢治と仏教思想」「「和」の思想について(一七条憲法の思想構造の解明)」「真理を求めた女性たち――仏教と女性」「日本における比較の方法について」「道元から見る日本の思想」「『正法眼蔵』現成公案の思想」「『正法眼蔵』における修証の思想」「『正法眼蔵』の世界―『正法眼蔵』「梅華」巻を読む―」「運慶と鎌倉仏教」「道元の仏性思想」「仏性について/親鸞の「仏性」思想」について、講演やシンポジウムでの提題を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、以下の2点である。 1)道元の思想構造を、その独自の世界把握を軸に『正法眼蔵』等テクスト内在的に解明する。 (2) 大乗仏教の修証論という観点から道元の思想的意義を多角的に検討し解明する。 この2点は、まず(1)を基盤としつつ、(2)が遂行されるという関係であり、さらに大乗仏教の修証論の観点からの研究の成果が(1)のテクスト内在的読みを深化させるという相互相依的関係でもあり、両者の併行的遂行によって、それぞれ、より大きな成果を挙げることが期待される。これまでの進捗状況としては、この(1)(2)に関して、道元を中心として親鸞、法然、空海等の修証論をテクスト内在的に解明するとともに、比較の観点からそれぞれの修証論を検討し、その成果の一部を論文発表や口頭発表しており、おおむね順調に計画を遂行できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、以下のような研究推進のための具体的な方策を考えている。 1) 現在取り組んでいる『正法眼蔵』諸巻についての本文校訂、諸異本の校合をさらに続行する。 2)現在取り組んでいる道元が参照した中国禅の典籍の調査収集を続行する。 3)「仏性」「身心学道」「行仏威儀」「坐禅箴」「大悟」「山水経」等の諸巻の全文注釈に関して、用例参照、文体の類型化などをふまえ研究を続行する。 4)以上の校訂、註釈、解釈作業に基づき、道元の思想的構造を解明する。 5)1)~4)を前提として、親鸞と比較しつつ大乗仏教の修証論としての道元思想の位置付けを行う。 6)1)~5)の思想的成果について学会で口頭発表、論文発表、研究報告、講演等を行なう。また、現在計画が具体的に進行している道元関係、日本大乗仏教関連の図書出版を実現させる。特に、海外発信について留意する。
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