研究実績の概要 |
(1)セネカやキケロ、教父(アウグスティヌスなど)に負うところが大きかったと言われる十二世紀の徳論の理解を二次文献と原典をもとに深めた。また、ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』に影響を与えたと考えられる、アルベルトゥス・マグヌス、トマス・アクィナスの『倫理学注解』の関連箇所を読解した。 (2)ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』の第二巻は三つの写本に残っている。① Durham Cathedral Library, C.IV.20, ff.196vb-254vb. (ダラム司教座聖堂図書館所蔵)② Cambridge, Gonville and Caius 611/341, ff.146ra-181vb. (ケンブリッジ大学図書館所蔵)③ Oxford, Oriel 33, ff.339ra-382ra. (オックスフォード大学図書館所蔵)ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』の現存するこれら三つの写本の書写の作業を、マイクロフィルムからスキャンされた画像を基に行った。 (3) 上記の三つの写本のうち、マイクロフィルムには撮影されていない箇所が多い、ダラム司教座聖堂図書館所蔵の写本を閲覧し、ダラム写本の書写を完成させた。そして、ディンスデールのヨハネスのものと同時代に書かれた『倫理学注解』の写本の多くがパリのフランス国立図書館に所蔵されているため、画像資料や先行研究での不明点を確認するために、同図書館所蔵の写本も調査した。 (4)ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』の第一巻の暫定的校訂版を印刷し、同時代の『倫理学註解』を研究している海外の研究者に郵送して、意見交換をはかった。 (5)ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』の第五巻について国内研究会で発表し、第五巻の分析及び校訂版を出版した。
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