校訂作業がなされていなかった貴重な文献(ディンスデールのヨハネスの『倫理学注解』)を校訂版にすることで、またその文献について研究論文を出版することで、研究がすすんでいなかった十三世紀後半のイングランドにおける倫理学の展開の解明に貢献した。また、同時代に大陸で書かれた倫理学注解書(トマス・アクィナス、アルベルトゥス・マグヌス、パリ大学学芸学部教師による)との比較研究をすすめて、中世ヨーロッパにおける思想上の交流の一端を明らかにした。結果として、ヨハネスの『倫理学注解』が、急進的なアリストテレス主義者の台頭と弾圧が生じた、1277年前後のパリの思想状況を解明する手がかりにもなりうることを示した。
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