研究課題/領域番号 |
17K02166
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森川 輝一 京都大学, 法学研究科, 教授 (40340286)
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研究分担者 |
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 教授 (20367725)
佐藤 啓介 南山大学, 人文学部, 准教授 (30508528)
佐藤 実 大妻女子大学, 比較文化学部, 教授 (70447671)
宮野 真生子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40580163)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 哲学 / 批判 / 寛容 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「政治などの公共的な営みに、それらが依拠する常識・社会通念もろとも、根本的な異議を突きつける「批判知」という哲学本来のあり方を追求」すべく、「倫理学、宗教哲学、政治哲学との分野横断的な比較考察を横軸とし、西洋思想および中国思想、日本思想を跨いだ比較思想史的研究を縦軸として、複眼的」な考察を進めることにあるが、そのためにはまず、各領域における哲学的批判知の捉え方を探り、比較検討の基盤を整える必要がある。平成29年度は、主として、この点にかかわる研究活動を行った。政治哲学領域では、現代政治哲学における分析哲学的手法の隆盛を思想史研究の見地から批判的に検討するとともに、哲学研究における政治の位置づけを、シュミットやハイデガーなどの20世紀政治哲学における古代のポリスの問い直しに着目しつつ、考察した。倫理学領域では、現代の道徳教育における規範意識の捉え方を検討するとともに、西洋近代における寛容思想の系譜を今日的視座から位置づけなおす作業を進め、哲学的な社会批判と、社会における共生という倫理的要請との接点を探る試みを行なった。宗教哲学領域では、リクールのアーレント受容における一つの留保に着眼し、相互承認による共生をめざす政治的な思考様式に対する、宗教哲学的批判の射程を吟味した。中国思想領域では、荀子の心術概念に着目して、現実の権力政治と政治的理念との狭間で、政治批判と政治参加の接点を探る儒家の思考様式を検討した。近代日本思想領域では、明治以降の西洋哲学の導入という文脈を踏まえ、京都学派による近現代のドイツ思想の批判的受容のあり方を再検討した。このように各領域で担当者が研究を進め、相互に活発な意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度を通じて、研究代表者ならびに研究分担者は、各々担当する領域の研究を進めつつ論考を準備し、3度開催されたコア研究会において意見交換を行い、各領域における批判知としての哲学に関する議論を明示化することに務めるとともに、比較研究の基盤構築に努めた。その成果の一部は、各担当者が個別に行った学会報告や論文公刊を通じて発表されている。ウェブサイト開設についても、準備作業が進行中である。このように、本共同研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究成果を踏まえて、計画通り、平成30年度は、各領域での批判知としての哲学の捉え方の共通点と相違点を明確化しながら、比較研究を進めてゆく。コア研究会を3回開催し、必要に応じて古代哲学や仏教哲学、社会心理学等の関連分野、また哲学カフェの実践に携わる哲学研究者の協力を得ながら共同研究を薦め、適宜各自が研究成果を学会報告や論文を通じて発表してゆく。
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