研究課題/領域番号 |
17K02168
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
舟場 保之 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20379217)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 世界共和国 / 諸国家連合 / 民主的な法治国家 / カント / ハーバーマス |
研究実績の概要 |
カントの法的‐市民的体制論が、「諸国家連合」か「国際国家」ないし「世界共和国」かという二者択一しか認めることができず、そのうえで「諸国家連合」が選択されている点にカントの体制論の限界を見出した。
他方、『永遠平和のために』において明確に「国際国家」ないし「世界共和国」を否定しつつ、それでも「普遍史の理念」においては「大きな国家体」、『理論と実践』においては「国際国家」、そして『人倫の形而上学』においては「共和国の共和国」に言及するカントには、場合によっては「国際国家」ないし「世界共和国」を肯定するロジックを見出すことができるかもしれないと考えられた。決め手となるのは、法的体制を可能にする3つの原理のうちのひとつである「法的自由」に、カント的共和主義の可能性を見出すことにある。こうしたカント的共和主義は、ハーバーマスによる「民主的な法治国家」論のロジックへとつながりうるものであり、こうして「諸国家連合」でも「国際国家」ないし「世界共和国」でもない平和を実現する第三の選択肢へと議論を展開しうることが判明した。
研究成果は、第36回批判的社会理論研究会(大阪大学、2019年9月22日)において、「ハーバーマスの民主的な法治国家論」として、また第44回日本カント協会学会(拓殖大学、2019年11月22日)において「2つの諸国家連合と世界市民主義」として、それぞれ発表した。また、9月および2月に、ヨハン ヴォルフガング ゲーテ大学(フランクフルト、ドイツ)において、アンドレアス・ニーダーベルガー教授、マティアス・ルッツ=バッハマン教授らと意見交換を行い、第三の選択肢提言へ向けての示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関における運営業務が想定以上に負担となり、「諸国家連合」でもなく「国際国家」ないし「世界共和国」でもない、平和を実現する第三の選択肢を提言するまでの道筋がつけられなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
カントの平和論がもつ理論的前提にハーバーマスの知見を補助線として修正を加え、第三の選択肢を考えることとする。具体的には、各地域共同体がそれぞれへと分裂せず世界規模での統合を実現しながら世界平和の実現に向けて機能しうるような法的体制とは、いったいどのようなものであるのかを探究する。探究を通じて、現代の議論の不備を補い、地域共同体に理論的正当性を与えるとともに、地域共同体相互および地域共同体と国連の関係も明確にし、こうした営為によって探究そのものの現代的意義を明らかにする。
探究の過程で、海外の専門家を招へいし講演会を開催するとともに、国内から若手研究者を数名招いて公開討論会を行う。(WEB会議とすることも検討中。)若手研究者の参加により、本研究に関係する研究が今後も継続され、成果としての第三の選択肢の有効性を検証し続けることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の運営業務が想定以上に負担となり、海外研究者を招へいするとともに国内若手研究者(複数)を招いて行う予定だった講演会・公開討論会を開催することができなかったことが主たる理由であり、今年度は当該講演会・公開討論会を開催するとともに、関連する経費を支出する。
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