研究課題/領域番号 |
17K02170
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中 真生 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00401159)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生殖 |
研究実績の概要 |
これまでの本研究の一連の成果を、単著『生殖する人間の哲学―「母性」と血縁を問い直す』(勁草書房、2021年)にまとめ、出版することができた。出版後に、著書の合評会がふたつ(レヴィナス協会主催、科研費国際共同研究(B)「子育ての現象学:フィンランド・ネウボラをフィールドに」(浜渦辰二代表)主催)、著書に関する対談がふたつ(BHチェンネル、論壇チャンネル「ことのは」)開催され、研究成果とその意義を研究者だけでなく一般の人にも広く伝えることができた。、 また、親鸞仏教センターでの「現代と親鸞」公開シンポジウム:<いのち>という語りを問い直すで、「いのちとその産み育ての結びつきと分離――「母性」、出生前診断、「赤ちゃんポスト」などを手がかりに」という提題を行った。さらに先述の科研費「子育ての現象学」主催の国際研究会、Second Online session on child care phenomenologyで発表、”The Public and the Private in Childbirth and Childcare Second Online session on child care phenomenology”を行った。これらの発表は著書の出版後の業績であり、著書では十分論じきれなかった「母性」の側面を、著書出版前後に刊行された母性に関する著作や、日本の近代の母性に関する状況も検討しながら掘り下げることができた。 さらに、老いや死別に関しても研究を始めており、広義の「生殖」に含まれると考える親子関係を、小さい子どもと親の関係にとどまらず、親の老いに伴う、介護や新たなケアの必要などの親子関係の変化や、死別も含めた親子関係の後半についても考察を展開している。老いについては「老いゆくこと、他者との関係」という論文にまとめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この研究では、海外や国内各地に出かけた上での文献調査や現場見学、学会参加も予定していたが、コロナの影響により実現できなかったため、海外出張を必要とする研究は、オンラインでの一つの国際発表を除きほとんど進められなかった。ただ、その他の研究に関しては、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」末尾でもふれたように、研究代表者は、広義の「生殖」には親子関係も含まれると考え考察を展開してきたが、親子関係にはじつは、小さい子どもと親の関係にとどまらず、親の老いに伴う、介護や新たなケアの必要などの親子関係の変化や、死別も含めた親子関係の後半の考察も重要であることを、本研究を通して実感している。そこで本年は、老いや死別を含めた、親子関係の変容の研究を、現象学の文献や思索を参照しながら進めていきたい。その研究の成果を、すでに依頼いただいている論文集への寄稿論文や、「哲学会」シンポジウムでの提題を通して積極的に行っていく予定である。また、生殖技術と身体、ジェンダーに関する発表を昨年度に「応用哲学会」のサマースクールで行ったが、その原稿をより練り上げて、出版予定であり、執筆を依頼されている応用哲学に関するテキストに寄稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた海外渡航や国内出張がコロナの影響で実施できなかったため使用額が計画よりも大幅に減少した。コロナの状況が改善すれば、出張費に使用し、改善が思わしくなければ、関連書籍やパソコン関連商品の購入に充て、研究をより促進し、深化させることに費やす予定である。
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