研究課題/領域番号 |
17K02170
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中 真生 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00401159)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生殖 |
研究実績の概要 |
今年度は、生殖技術に関する研究については、とくに出生前診断に焦点を当てつつ考察し、論考「生殖技術と身体―身体はどのように被っているか」(『3STEPシリーズ 応用哲学』(昭和堂、校正中)にまとめて発表することができた。また、生殖の理論的考察に関しては、レヴィナスから着想を得つつ独自にそれを発展させる考察を、論考「レヴィナスと生殖論」『レヴィナス読本』(法政大学出版局)にまとめ発表することができた。さらに生殖に関する現実に即した問題についても、赤ちゃんポストや養子縁組などの例を取り上げつつ、論考「いのちとその産み育ての結びつきと分離―「母性」、出生前診断、「赤ちゃんポスト」などを手がかりに」、『現代と親鸞』第47号(親鸞仏教センター)で具体的に考察することができた。また「生殖」の一部に位置づけている養育に関する研究成果を、次の国際研究会で海外研究者向けにも発信することができた。" The Public and the Private in Childbirth and Childcare,” Second Online session on childcare phenomenology (オンライン)。 さらに、「生殖するものとしての人間」の一面であり、広義の「生殖」に含まれる、いわば影の側面でもある「喪失」や老いについても、今年度本格的に研究を着手することができた。その成果は、論考「喪失という攪乱」『あらわれを哲学する』(晃洋書房)や、「老いゆくこと、他者との関係」『フェミニスト現象学』(ナカニシヤ出版、校正済み)、学会シンポジウムでの提題、「喪失の現象学?―失われたもうひとつのもの」、哲学会大会シンポジウム:現象学の新展開(東京大学)にてひとまずかたちにし、発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献研究や理論的、実践的考察は順調に行うことができたが、コロナウイルスによる行動制限のため、国内外への出張がほとんどできなかったため。具体的には、出張することによる関連分野の研究者との意見交換やディスカッション、また関連する現場の見学や聞き取りについてはほとんど行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
「生殖するものとしての人間」のいわば前半部分、あるいは興隆期である、妊娠、出産、養育に関してはある程度研究を充実させられたので、後半部分、あるいは下降期である、老いや喪失経験に関する研究を本格的に展開し、より充実させ、研究全体のバランスをとれるように努める。その際、国内外の研究者と積極的に議論や意見交換を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスによる行動制限のため国内外への出張がほとんどできなかったことや、研究課題を延長するうちに、「生殖」に関する新たな関心が徐々に重みを増すようになり、研究計画の一部変更があったため次年度使用額が生じた。最終年度は、とくに国内への出張を積極的に行い、研究者との対面での議論や意見交換を行うとともに、「生殖」の重要な一側面である「喪失」に関する研究を充実させ、研究全体のバランスを整える。
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