一方で、避妊、妊娠、不妊、中絶、出産、養育、親であることといった、性差や個人差の大きな具体的主題を扱いつつ、他方で、人間が生まれ、成長し、次世代に引き継ぎ、老い、死んでいくという誰にでも普遍的に当てはまるより広義での「生殖」の観点からも、生殖するものとしての人間を考察した。 哲学ではあまり扱われなかった「生殖」を、身体やジェンダーと深く関連させながら、具体例にも目配りしつつ、哲学倫理学的に考察した。なかでも、「母性」の従来の見方を分析し解体しつつ、「母性」の核と思われるところは維持し、そこに出産していない男性や、血の繋がりのない養親らも含めることで「親であること」を再考した点には意義がある。
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