研究課題/領域番号 |
17K02173
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山本 與志隆 愛媛大学, 法文学部, 教授 (50294781)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ニヒリズム / テクノロジー / ハイデガー / ニーチェ / ユンガー / 自然 / 労働 / 活動 |
研究実績の概要 |
平成29年度は研究成果として、学術論文1編「テクノロジー時代のニヒリズム―ニーチェとハイデガーの思惟を手がかりにして―」(『愛媛大学法文学部論集人文学編』第44号、2018年)、翻訳・解題1編、M. ハイデガー「エルンスト・ユンガーへ」(『現代思想2月増刊号』青土社、2018年)を公にすると共に、学会発表1件「ハイデガーの技術論における人間存在―E. ユンガーの思想との交錯」(関西倫理学会2017年度大会、神戸大学)を行った。 論文「テクノロジー時代のニヒリズム―ニーチェとハイデガーの思惟を手がかりにして―」では、本研究課題の中心的なテーマでもある、科学とテクノロジーの内に胚胎するニヒリズムのあり方について、ニーチェが『力への意志』に示されたその思惟の内で早くから認識していたことを確認し、それがハイデガーの『技術への問い』とどのように接続するかを指摘した。 また、翻訳・解題の「エルンスト・ユンガーへ」はハイデガーが技術への問いを先鋭化していく中で重要な参照軸としたであろうE. ユンガーへの言及を未邦訳文献(ハイデガー全集第90巻)から訳出すると同時に、両者の関係、さらにそれぞれとニーチェとの関係を明確化することに努めた。 そうした視点をもって、学会発表「ハイデガーの技術論における人間存在―E. ユンガーの思想との交錯」では、ハイデガーが現代のテクノロジーに投げかけた問いを改めて明らかにした上で、それがユンガーの『総動員』、『労働者 支配と形態』といった著作に示された思惟とどのような関係に立ち、いかなる点において切り結ぶかを、両者のテキストを対照することを通して立証した。さらにテクノロジーのニヒリズムの内に投げ込まれた現代の我々が、直面する課題に向き合うべき方向性として、ハイデガーのピュシスの理解を受けて、「自然(じねん)」というあり方の内に見出しうることを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、本研究課題の遂行は概ね計画通りに進行していると評価することができる。今年度はニヒリズムと現代テクノロジーの根本的連関を明らかにするために、直接的にハイデガー、ユンガーの思惟を考察すると共に、それらを導き出した参照軸として、と言うよりもむしろ、先駆的にこの問題連関に取り組んだ者として、ニーチェの科学と技術に対する思惟を検討した。このことを通して、本研究の基礎を確固としたものとすることができたと思量される。 なお、今年度に関しては諸事情により、海外での研究調査は実施できなかったが、国内では、従来より出席していた「関西ハイデガー研究会」にほぼ毎月出席した。また愛媛大学・松山大学の教員・学生を中心とした「H. アーレント研究会」に参加することとなった。ここでは『人間の条件』を取り上げているが、その第36節から第38節は、まさに本件休暇だと密接に関係していることが確認された。 さらに、E. ユンガー研究の第一人者である京都産業大学の川合全弘教授とコンタクトを取り、次年度以降に「E. ユンガー研究会」(仮称)の立ち上げにご協力を仰ぐことができることとなった。これによって本研究課題にも更なる進展が見込まれると期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の生花を受けて、さらにハイデガー、ユンガーのテクノロジーについての思惟の把握を進めていく。 また先述の「H. アレント研究会」、「E. ユンガー研究会」(仮称)の実施を通して、ニーチェ、ハイデガーの思惟を受けて、それぞれが現代の科学技術、テクノロジーをどのように捉えていたかを明らかにすることが当面の課題となる。そこから、ユンガー、アレント、そしてハイデガーの中心課題であった「労働」と「活動」のあり方を明確化していく。そのために、従来通り「関西ハイデガー研究会」やハイデガー・フォーラム等で、国内のハイデガー研究者とハイデガーの思惟についての理解を深めていくことで、現代のテクノロジーに向き合う我々のあり方、とりわけ労働と活動のあるべき方向性を示していくことを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度より「E. ユンガー研究会」(仮称)を立ち上げ、その際に謝金等を使用する予定であったが、参加をお願いしていた方のご事情により、今年度は実施に至らなかったため、若干の次年度使用額が生じることとなった。 次年度より当該研究会の立ち上げが見込まれているため、繰り越して使用する予定である。
|