近年アリストテレス倫理学の復権が著しい。近代の道徳哲学を主導してきた二つの潮流である功利主義と義務倫理学に代わる第三の見方として、「徳倫理学」(virtue ethics)への関心が最近高まっている。この新たな見方の探求に際して、一つの古典的表現としてアリストテレス倫理学が再評価されて来ている。 (短編で偽作とされる『徳と悪徳について』を除く)アリストテレスの三つの倫理学的著作の内、最も研究が遅れているのが、『大道徳学』である。その大きな原因の一つは、ギリシア語テキストの批判校訂版の不在である。本研究は、この不備を補うために必要な同著作のギリシア語写本を研究したものである。
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