研究課題/領域番号 |
17K02177
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
竹山 重光 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60254520)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カント哲学 / 情動 / 気分 / 個物 / 概念 |
研究実績の概要 |
2018年度は前年度に引き続き、カント『判断力批判』に関係する論理学的概念の研究と現代的な情動研究一般の調査・考察とがなされた。 前者の作業については、予想されたこととはいえ、『判断力批判』のテキストばかりか『純粋理性批判』や『論理学』、『論理学講義』のテキストなど、かなり幅広い調査・検討の必要があり、現在も続行している。後者の作業については、本科研費をもって昨年度購入した、60余編の研究論文からなるリーディングズPhilosophy of Emotion (Routridge)の検討を進めつつ、他方で、現象学からのアプローチであるP-L. Coriando, Affektenlehre und Phaenomenologie der Stimmungen.(情動論と気分の現象学) などの検討を行なっている。 こうしたなか、早くから現代的情動研究に携わってきた重要研究者のひとりであるヤン・エルスターの著作Sour Grapes (1983)が『酸っぱい葡萄』として翻訳公刊され、縁あって、その書評を依頼され公にした(『図書新聞』3385号、2019/2/2)。また、昨年度はまだ出版予定の段階だった「穏やかな憂鬱―カント理解のためのノート」が公になった(『紀要』47巻、13-39頁。和歌山県立医科大学医学部教養・医学教育大講座、2018年6月)。 さらに、本研究のおもな最終的成果物である、研究成果をまとめた冊子のための草稿を執筆しはじめた。実際に研究に着手してみて感取されたテーマそのものの広がりと、テーマのそもそもの大きさを鑑みて、当初の見積もりより早めに文字に起こしはじめている。全体を見通した構成と個別的事項の確認・検討とを、循環的に積み重ねながら、最終年度までこれを継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「概要」に記したリーディングズの検討と批判的対話が、最新の研究論文を多分野にわたって多数集めたものであるゆえに、なかなか容易には進まない。この作業はもともと同リーディングズの出版という偶然の出来事によって昨年度本研究に順序変更という仕方で組み入れられたものであるから、この点で、当初の計画に変更と遅れが出ていると言わざるをえない。 けれども、研究成果をまとめた冊子のための草稿を本年度から執筆しはじめており、これは、当初の計画からの変更ではあるが、計画よりも早く着手された作業ということになる。また、決して十分なものではないといえ、本研究に関連性をもつ文章を公にできた。 以上を踏まえると、おおむね順調に進展していると判定できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画で第2年度に割り振られていた、『判断力批判』ならびに他のカントの重要著作における個別的具体的な自然事物の経験をめぐる諸論点の探究・検討に取りかかる。 この作業は、『判断力批判』における、美にかかわる情感的判断のみならず、生命体にかかわる目的論的判断の領域にも、踏み込んでいくということを意味する。なお、これは本年度も行なった『判断力批判』に関係する論理学的概念の研究と連関させながら行なわれる。 本年度からはじめた研究成果冊子の原稿執筆を継続する。
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