研究課題
本年度は、共著の書籍『ワードマップ 現代現象学』(新曜社)を刊行して、今後の研究の基盤を形成することができた(共著)。そこでは、現象学が現代哲学として持つ意味を検討した上で、現象学的倫理学が現代倫理学としてどのような可能性を持っているかを示した(第1章「現代現象学とは何か」、第6章「価値」、第9章「人生」)。現象学は、人間の生き方に注目して、当人の生きる状況のなかで生きる指針を示すことができる。さらには、『倫理学論究』(関西大学)の二つの論文(「現象学的倫理学に何ができるか?――応用倫理学への挑戦――」「現象学的倫理学における記述・規範・批判――品川哲彦氏からのコメントへの応答」)にて、応用倫理学への現象学的アプローチの可能性を示すことができた。これは、現代倫理学の研究者との論争を通じて、現象学の可能性と限界を明らかにしたものである。現象学は、原理原則から現実の問題を裁断するのではなく、状況に応じた思考を展開することができる。実際に、看護倫理の場面では、ハイデガーに依拠したH.ドレイファスの技能知の現象学的分析が、看護師の看護実践における倫理の教育の場面にまで取り入れられている。理論に根ざして現実の問題を思考するのではなく、状況に応じた振る舞いに対応する行為を導き出すことが、看護実践では求められている。技能に倫理が内在しているという発想は、現代倫理学の枠組みの再検討を迫るものでもあるだろう。
1: 当初の計画以上に進展している
書籍の刊行をすることができた。
個別的なトピックに取り組むことで、応用倫理学への現象学的アプローチの可能性を示す。
論文の校正が翌年度になった。
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現象学年報
巻: 33 ページ: 4-9
倫理学論究
巻: vol.4, no.2 ページ: 4-9
巻: vol.4, no.2 ページ: 44-59