研究課題/領域番号 |
17K02179
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
越門 勝彦 明治大学, 法学部, 専任准教授 (80565391)
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研究分担者 |
竹内 聖一 立正大学, 文学部, 准教授 (00503864)
朝倉 友海 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30572226)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 欲望 / 行為の説明 / 正当化 |
研究実績の概要 |
本研究課題の2019年度の研究実績は、次の二つの分野に関わるものである。①メタ倫理学、道徳心理学、行為論、②20世紀フランス哲学。 ①メタ倫理学、道徳心理学、行為論といった分野において、欲望の概念がどのように規定されているか、行為を動機づける要素としての欲望の働きがどのように説明されているかについて、リサーチを行った。主要な研究対象であり、かつ非常に有用な知見を与えてくれたテクストとして、Mark Platts, Moral Realities: An Essay in Phiosophical Psychologyと George Frederick Schueler, Deisre: Its Role in Practical Reason and the Explanation of Actionを挙げることができる。前者からは、ネーゲル、マクダウェル、B.ウィリアムズといったメタ倫理学者の議論において欲望概念がどのように異なる仕方で扱われているかに関して、明確な見通しを得た。後者からは、欲望によって行為を説明する場合、デイヴィドソンが意図的行為の要素とみなす「賛成的態度」pro-attitudeとしての欲望と、あるものを食べたいというときの「本来の欲望」desire properとを区別する必要があるという重要な示唆を得た。 ②モーリス・ブロンデル、ジャン・ナベールといった、行為や倫理を主題的に論じたフランスの哲学者の議論を、欲望という観点から読み直した。ブロンデルは「意志の弱さ」、ナベールは「行為の正当化」というように、倫理学あるいは行為論の重要な問題と関連させつつ、再解釈を試みた。その成果は共著の形で公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的は次の三つに大別される。 (ⅰ)〈欲望desire〉を「欲求need」、「意志will」、「感情emotion」から区別する (ⅱ)実践的諸領域(倫理、宗教、精神分析)を根拠づける〈欲望〉の諸性質を規定する (ⅲ)〈欲望〉と権力との複雑な関係性を明確にする これらのうち、(ⅰ)は順調に進行しており、(ⅱ)に関しても、倫理と宗教の領域における〈欲望〉の諸性質については解明が進み、十分な成果が得られた。しかし、精神分析の領域に関しては研究が進展しておらず、(ⅲ)については、ほとんど着手できていない。こうした状況から、「やや遅れている」と判断した。このように研究の進捗に遅れが生じたのは、一つには、研究代表者越門が、2020年4月からの勤務先の移動のため当該年度10月以降は雑務に追われたことが原因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
独立して進めてきた英語圏の研究とフランス語圏の研究を統合することが、今後の最優先の課題である。一本の論文の形でこの課題を実行に移す予定であり、構想はすでに固まっている。その構想に基づいて、行為論に重点を置き、意志との違いに注目しつつ欲望についての考察を進める。 研究目的(ⅲ)「権力との関係性」については、研究動向のサーベイにとどめ、本研究課題での本格的な探究は思い切って断念し、研究目的(ⅰ)・(ⅱ)の遂行に専念する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に旅費として助成金を使用する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、出張をすべてキャンセルしたため、当該助成金が生じた。 長距離移動の自粛要請が解除されれば、旅費として使用する計画である。
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