研究課題/領域番号 |
17K02180
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
武内 大 立正大学, 文学部, 教授 (10623514)
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研究分担者 |
大塚 公一郎 自治医科大学, 看護学部, 教授 (00291625)
小林 聡幸 自治医科大学, 医学部, 教授 (70296101)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 夢 / 明晰夢 / 幻覚 / 睡眠麻痺 / 悪夢 / 現象学 / ヴィジョン |
研究実績の概要 |
2019年度は、現象学的理論研究や神経現象学的研究から現象学的実践研究や歴史文化研究へと重心が移った。おもに大塚、小林、西多、渡辺の協力により「明晰夢」に関わるインタビュー調査がようやく可能となり、明晰夢体験者6名から有益かつ貴重なデータを得ることができた。 定例研究会では、若名咲香氏(筑波大学)の講演「ヴィクトリア朝絵画における「眠り」の主題の変容」、和田茂胤氏(三条東病院)の講演「私の体験した明晰夢」、松田英子氏(東洋大学)の講演「悪夢の生起メカニズムと心理的治療」、麻生武氏(奈良女子大学) 「準現実(夢)のエピソード記憶と現実のエピソード記憶の違いはどこにあるのか? 今はなぜ準現実(夢)ではなく現実なのか?」等々、さまざまな分野の専門家による講演が行われた。立正大学文学部哲学科の学生も数名参加し、活発な討論が展開された。 2019年度の研究の総決算となったのが、9月21日に明治学院大学において開催された質的心理学会でのシンポジウム「夢の現象学 : 学際的アプローチ」である。夢の現象学を質的心理学として展開する可能性が模索された。渡辺は、狭義の夢の現象学の紹介を兼ねてフッサール志向性論に基づいた漱石『夢十夜』の現象学的分析の試みを提示した。岡田斉氏(文教大学)は、夢見のメカニズムよりも夢の現象を重視する神経認知理論の立場から行った夢想起に関する調査研究の一端を紹介した。武内は、明晰夢に関するインタビュー調査を手がかりに、初期近代ヨーロッパにおける妖精信仰の解明を試みた。小野は、イスラム神秘主義における夢=ヴィジョン体験を現象学的観点から解明した。最後にコメンテーターの麻生武氏が、自らの夢研究を踏まえて、夢の現象学という試み自体が抱える方法論的難点を指摘した。麻生氏の提言は、その後も定例研究会などで議論が繰り返され、今後の我々の研究にとって一つの大きな課題となった。
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