研究課題/領域番号 |
17K02183
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
齋藤 智志 杏林大学, 外国語学部, 教授 (70442019)
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研究分担者 |
関塚 正嗣 公立諏訪東京理科大学, 共通・マネジメント教育センター, 教授 (00350851)
上野山 晃弘 日本大学, 危機管理学部, 講師 (00440024)
竹内 綱史 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (40547014)
鈴木 克成 青森中央学院大学, 経営法学部, 教授 (60279487)
山本 恵子 東京造形大学, 造形学部, 准教授 (70434248)
伊藤 貴雄 創価大学, 文学部, 教授 (70440237)
高橋 陽一郎 日本大学, 文理学部, 教授 (80333102)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ニーチェ / ショーペンハウアー / 科学主義 / 反科学主義 |
研究実績の概要 |
2018年8月26日~28日に青森中央学院大学にて第2回研究会を開催、個人研究発表、研究構想発表、ワークショップを行った。また、研究成果を一般市民に公開すべく、8月28日に青森県むつ市の「むつ来さまい館」にてシンポジウム「ショーペンハウアーとニーチェ――意志の否定か、意志の肯定か?」を、むつ市市民講座のプログラムとして開催した。個人発表は、①関塚正嗣「ニーチェの真理論と科学批判――命令としての矛盾律」、②齋藤智志「ショーペンハウアーにおける超越論哲学と自然哲学」、③竹内綱史「ニーチェによるショーペンハウアーの共苦道徳批判」、④梅田孝太「ニーチェの力の思想――生成としての自然理解から見たニーチェの科学主義」の4本、研究構想発表は、①鈴木克成「ニーチェとクーン――可謬性を前提とし、「反証」に基づかない「真理」」、②高橋陽一郎「ショーペンハウアーにおける自然哲学の諸問題」、③伊藤貴雄(創価大学)「意志のアナロジーに関する一考察」の3本、ワークショップは、①「科学と生」(1):「ショーペンハウアーの自然科学批判(承前)」、②「科学と生」(2):「ニーチェ『悦ばしき科学』における科学と芸術」の2本であった。また、むつ市でのシンポジウムでは、上記表題のもと、齋藤智志と本郷朝香が提題を行った。 本研究は、ニーチェ哲学の4つの主要概念(権力への意志、超人、芸術の生理学、永遠回帰)を、彼の先駆者にして批判対象でもあるショーペンハウアーと対比しつつ科学主義の視点から整合的に解釈することでニーチェ解釈を刷新し、可謬的な科学の営みが哲学に対して持つ意義と、「絶対的真理」と化してしまう科学の陥穽とを複眼的に精査する視点を得ることを目指しているが、今年度の研究は昨年度に引き続き、上記研究会を核としてこの目的の達成に必要な直接的および間接的な成果を蓄積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「研究概要の実績」にも示した通り、ニーチェ哲学における4つの主要概念である、権力への意志、超人、芸術の生理学、永遠回帰を対象とし、それらを科学主義的側面、反科学主義的側面、ショーペンハウアーとの対比といった観点から分析したうえで、科学主義的ニーチェ解釈という新機軸を呈示することを目指しているが、むろんこうした概念や観点の切り分けは本研究チームの問題意識と分析の対象をクリアーにするためのマトリックスであって、実際にはこうした概念や観点はニーチェ哲学のなかでは密接に融合し、一つの全体を形成している。したがって、昨年度の研究に引き続き本年度の研究も、ニーチェの科学主義と反科学主義、ならびにその比較対象であるショーペンハウアーの自然科学観に関する多角的で包括的な研究と、それを支えるテクストの綿密な読解作業を継続する必要があった。 以上の観点からすると、「研究概要の実績」に示した個人研究発表や研究構想発表は、総合的に見て本年度に期待されていた内容をおおむね満たすものであった。また、ワークショップでのショーペンハウアーとニーチェのテクスト読解は、期待されていた内容を十分に満たすものであった。加えて第2回目のニーチェ・セミナー(日本ショーペンハウアー協会主催、2018年12月16日開催)時には、当初の計画通り、自然主義に関する優れた研究書を上梓している井頭昌彦氏に、自然主義の最新動向についての講演を行ってもらい、研究メンバーの自然主義理解をより深めることができた。 以上より、本研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」に該当すると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、メンバー全員による研究会を核とし、それに、ワーキンググループによる随時のメール会議と、日本ショーペンハウアー協会「ニーチェ・セミナー」時(年2回)のワーキンググループ会議を加えることで進めることを当初の計画としたが、進捗状況は上記の通りおおむね順調であるので、次年度も引き続きこの方法で進めるとともに、次年度が本研究の最終年度であるので、総括シンポジウムを開催する予定である。 第3回研究会については、8月25日~27日に龍谷大学で開催することが決定している。また、2019年度第1回目のニーチェ・セミナーが5月3日・4日に八王子セミナーハウスで開催されることも決定している。研究会は、個人研究発表5本とワークショップ2本を内容とし、それに加えて総括シンポジウムに向けた研究総括企画会議も実施する予定である。 総括シンポジウムの内容の詳細は、第3回研究会を含むこれまでの研究会等での成果を総合的に勘案して上記会議で決定するが、当然ながらそうした成果の蓄積に基づいて本研究テーマについての一定の結論を提示する予定である。なお、本シンポジウムは当初の計画通り、3年間の研究成果を広く世に問うべく公開シンポジウムとする。加えて、本シンポジウムでは優れたニーチェ研究を公にしている研究者を複数招いて講演をしてもらうとともに、その研究者も含めた参加者全員で本研究会での成果をどのように評価するかも論じ合い、次なる研究のありうべき展開も模索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた書籍等の一部の購入を完了できなかったために残額が生じたので、それは次年度に繰り越して予定書籍等の購入に当てる。
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