研究課題/領域番号 |
17K02184
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
寺本 剛 中央大学, 理工学部, 准教授 (00707309)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 農業 / スマート農業 / 技術哲学 / 環境倫理学 / 食農倫理 / 専門知 |
研究実績の概要 |
先端農業技術の現状と今後のあり方について哲学的・倫理学的考察を行うことが本研究の目的であるが、その目的を達成するための予備的作業として、本年度は文献調査を中心に情報収集を行い、その成果を学会等で発表した。 研究代表者の寺本剛と研究協力者の鈴木俊洋は、農業全般の情報を各種文献にそくして収集し、そこで問題となっていることがらとそれにどのような技術的・政策的対応がなされているかということを技術哲学および環境倫理学の観点から明らかにした。具体的な成果は、京都生命倫理研究会において発表するとともに(「intensificationの倫理」(寺本)、「農業的熟練知と新技術の倫理学」(鈴木))、科学技術社会論学会ではオーガナイズドセッション「食と農の技術哲学」において提題を行った(「農業の効率化をめぐる倫理問題」(寺本)、「農業における新技術をいかに評価するか?」(鈴木))。なお、これらの発表の段階ですでに、平成30年度に行う予定であった先端農業技術評価の問題、農業技術専門知の伝承の問題、先端農業技術の環境倫理学からの批判的検討に着手することができ、一定の成果をあげることができた。 また、研究協力者である齋藤宣之と竹中真也は農業倫理学の先行研究をサーベイするとともにその批判的検討を行った。具体的には、アメリカの農業倫理学の第一人者であるP.B.トンプソンの見解をまとめて紹介し、それが日本的な文脈で効力を持つかどうかについて検討を加えた。その成果は京都生命倫理研究会(「トンプソンのアグラリアニズムの位置づけについて」(竹中))および科学技術社会論学会のオーガナイズドセッション「食と農の技術哲学」において発表された(「環境倫理と農業―P.B.トンプソンに即して―」(齋藤・竹中))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標では、初年度は情報収集を行うだけの予定であったが、研究協力者による協力のおかげで研究が進捗し、その成果を各方面の学会等で発表することができた。また、この研究の過程で、平成30年度以降に行う予定であった研究内容(先端農業技術を評価するための評価軸の検討、農業技術専門知の伝承の問題、環境倫理学からの批判的検討)を先取りして行い、成果発表につなげることができたため、その点で本研究は当初の計画以上に進展していると言える。 ただ、その一方で、初年度に行う予定であったフィールド調査については実現できていない。もっとも、フィールド調査の準備は着実に進めており、平成30年度に行う具体的な目処が立っている。 以上のことから、本研究は全体として順調に進展していると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度にはフィールド調査を行い、先端農業技術の現状と今後について具体的な情報を収集する。その一方で、先端農業技術を評価するための評価軸の検討を技術哲学、環境倫理学および農業倫理学の専門家の助力を仰ぎならが遂行する。加えて、ICT技術およびビッグデータと農業技術専門知の関係についてのより本格的な考察に着手する。 初年度に研究協力者として活動した鈴木、齋藤、竹中には、平成30年度以降は研究分担者として活動してもらい、研究代表者の寺本とともに、以上の研究で得られた成果を各種学会および研究会において発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において研究成果発表のための旅費が不足したため、余裕を持った額を前倒し請求した。それ以降当該年度内では、大きな支出がなかったため、余裕を見ていた分が次年度使用額として残ることとなった。残った次年度使用額は、元々次年度の研究に使用するための資金を前倒し請求したものであり、予定していた次年度の研究を推進するために、当初の計画に沿って使用する。
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