研究課題/領域番号 |
17K02189
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
上原 雅文 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30330723)
|
研究分担者 |
柏木 寧子 山口大学, 人文学部, 教授 (00263624)
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
栗原 剛 山口大学, 人文学部, 准教授 (50422358)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 愚管抄 / 慈円 / 神仏共存 / 神仏習合 / 現存 |
研究実績の概要 |
共同研究としては、『愚管抄』巻第三の後半における解釈上の問題点を3月の研究会で議論し、部分的に試訳を作成した。その成果「『愚管抄』―問題点と試訳(2)」を神奈川大学学術機関リポジトリ(http://hdl.handle.net/10487/15058)で公開した。また8月の京都研究合宿では、慈円が修行の場所とした比叡山の諸寺、特に無動寺周辺を調査した。 個別研究は以下である。研究代表者・上原は密教の原理について考察し、インド密教で想定されている仏法以前の「神」と仏法との関係が、日本においてどのように変容したのかという視点から、慈円の神仏共存神話の一端を解明すべく試みた。研究分担者・柏木は、慈円の思想の先駆的表現が見られる『今昔物語集』を読解し、とくに天竺部の仏伝中、下天・托胎から成道・教化開始に至る諸説話に即し、釈迦仏の智慧・慈悲の描かれ方について、上求菩提・下化衆生という菩薩のあり方との関係を検討した。また、釈迦仏出生時を原点として、天竺・震旦・本朝三国に生起する全事象を釈迦仏教化の展開史と捉える世界観についても考察し、研究会で報告した。研究分担者・吉田は監訳注者として『定本 葉隠〔全訳注〕』(全3冊・ちくま学芸文庫)を刊行した。上巻解説論文において「候」の語がもつ武士の語りの重要性を指摘した。また『愚管抄』の歴史語りを位置づけるべく、『源氏物語』と『葉隠』に通底する思想語りの基軸を探った。研究分担者・栗原は、『愚管抄』に描かれた武士像の理解に繋げるべく、後世の武士道書(『葉隠』)を読解することを通じて、武士の「現存」をめぐる考察を進めた。また3月の研究会では、神仏関係思想に対する原理的考察への一助として、近世の人形浄瑠璃に表現された、主人公の神仏への信仰の意義についての研究発表を行った。佐藤は『現存の倫理学』の執筆を進め、2018年度前半には出版予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、『愚管抄』の現代語訳と問題点について議論できている。さらに『愚管抄』および慈円の思想についての個別研究も順調に進んでいる。写本の蒐集が完全ではない点が不十分な点である。
|
今後の研究の推進方策 |
『愚管抄』巻第七について、解釈上の問題点を挙げて議論し、全文についての試訳を作成する。また議論を具体的に進めるために『愚管抄』全文のデータ化を完成し、索引も完成させる。当初の計画では、8月には京都で調査合宿を実施する予定であったが、現地での調査が概ね終了したため、神奈川大学での研究合宿に変更した。個別研究については、当初の計画通り進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請時には、平成29年度は219万円、平成30年度は151万円、平成31年度は130万円という直接経費での執行計画であった。しかし交付決定の額はそれぞれの年度で150万、100万、90万に減額された。それに従って書籍の購入計画を多少変更し、2年目以降にも必要書籍が購入できるように1年目の書籍の購入を多少控えたために、267,714円の次年度使用額が生じた。今後も、各年度で出来るだけ均等に書籍が購入できるように計画的に執行していく。
|