研究課題/領域番号 |
17K02191
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
三浦 隆宏 椙山女学園大学, 人間関係学部, 准教授 (90633917)
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研究分担者 |
百木 漠 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員 (10793581)
渡名喜 庸哲 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (40633540)
木村 史人 立正大学, 文学部, 専任講師 (90757725)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハンナ・アーレント / マルクス / 全体主義 / ハイデガー / 技術 / 活動 / カント / ギュンター・アンダース |
研究実績の概要 |
初年度の平成29年度は、代表者の三浦が会長を務めるアーレント研究会の夏の大会シンポジウムにおいて、「哲学と政治――フランス・イタリア思想におけるアーレント」を、また春の大会では金慧氏の『カントの政治哲学 自律・言論・移行』の合評会を開催するとともに、分担者の木村らが『人間の条件』と『活動的生』の比較検討を行なうことで、初年度の研究課題の遂行にあたった。また、『アーレント読本』の編集会議を実施し、執筆者への依頼作業等をほぼ終えることができた。以上の共同研究とともに、以下では各人が行なった研究実績の概要を記す。 三浦は、アーレントとデリダ、カントを「嘘」と「範例」の観点から比較検討する論文と沖仲士の哲学者エリック・ホッファーとアーレントとの邂逅をテーマとした論文を公表したほか、アーレントの平等論の意義をトクヴィルを参照しつつ明らかにする発表を行なった。 百木は、単著書『アーレントのマルクス』を出版したほか、『全体主義の起源』と『人間の条件』を中心に彼女の思想を解説した論文と昨今のポピュリズムの広がりを1990年代以降の思想的状況から分析した論文を公表した。また、経済社会学会では個人報告を、唯物論研究大会ではセッション報告を行なった。 渡名喜は、現代哲学・倫理学におけるアーレントの位置づけという関連からアーレントに関連した比較研究を進め、アーレントの最初の夫であり共鳴した思想を展開したギュンター・アンダースについての論文と20世紀フランスにおいてアーレントに倣い全体主義についての思想的分析を深めたクロード・ルフォールに関する論文を執筆し、口頭発表も行なった。 木村は、アーレント研究会にてアーレントの技術論をフィーンバークらの社会構成主義の思想を取り入れた「技術の哲学」を用いて考察した発表を行なったほか、アーレントの活動論をハイデガーの他者論、本来性論を用いて捉え直した論考等を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の中心である「国際的なアーレント研究状況の整理」については、初年度はイタリアが手つかずのまま残されたものの、フランス語圏にかんしてはナンシーやリクールといった哲学者とアーレントとの関係について整理した論考等を3本、アーレント研究会の会報である『Arendt Platz』に掲載するとともに、分担者の百木と協力者らの尽力により、「オンライフ・マニュフェストとアーレント――デジタル技術の発展における社会と知を考える」という特集を同会報にてもうけることができたこと、また上記の共同研究に加え、代表者と分担者が個々にそれぞれのテーマ設定のもと精力的に研究成果を公表し、さらに最終年度での刊行を予定している『アーレント読本』の作業も順調に進んだことから、「おおむね順調に進展している」と判断してよいと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、アーレント研究会と密接に連携しつつ、研究課題の遂行にあたる。 「東アジアにおけるハンナ・アーレント」をテーマとした国際シンポの開催は、準備がまだ十分に整っていないため延期し、その代わりにドイツからアーレント研究者であるシュテファニー・ローゼンミュラー氏を招聘し、アーレント研究会の夏の大会にて、「ポピュリズムと判断力」をテーマにした特別講演会を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:平成29年度において研究費の未使用分を次年度に繰り越すこととなった理由としては、おもに以下の2点が挙げられる。まず一つ目は、アーレント研究会の夏の大会シンポジウムで登壇した3名の研究者が全員専任職をもつ大学教員であったため、旅費および宿泊を必要とせず、また謝金も一人あたり一万円で済んだこと。次に分担者の百木が、平成29年度は日本学術振興会の特別研究員職に就いており、特別研究員奨励費を得ていたため、分担金をそれほど使用せずに済んだこと。
使用計画:平成30年度においては、矢野久美子教授(フェリス女学院大学)を介してドイツからアーレント研究者のシュテファニー・ローゼンミュラー氏を招聘する予定であり、その講演会実施に伴う通訳等の人件費や謝金、および協力者であるアーレント研究会のスタッフらの旅費・宿泊費に使用するほか、資料収集と現地調査のために協力者を一名、ドイツに短期間派遣することを計画している。
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