研究課題/領域番号 |
17K02192
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
神島 裕子 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (60449329)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ロールズ / 道徳心理学 / ヘルスケアワーカー |
研究実績の概要 |
本研究は「グローバル社会における正義論と道徳心理学の再接続」と題して、ジョン・ロールズ(John Rawls)の『正義論』の第三部「諸目的」を批判的に検討し、人間の正義感覚の陶冶に関する現代正義論の洞察を踏まえた上で、実践問題として移民に関わる倫理的問題を取り上げ、「彼ら」に対する「われわれ」の道徳的構えのあり方について考察するものである。具体的には、1. ロールズの『正義論』の第三部の精査、2. ロールズの『正義論』における正義論と道徳心理学の接続性の検討、3. その接続のグローバルな事例を通じた再接続の試論を行うことである。初年度は基礎作業段階とし、『正義論』第三部はじめ関連書籍を原著と付き合わせながら精読しつつ、ロールズの『正義論』における正義論と道徳心理学の接続性の検討、道徳心理学的な理解が妥当であるか否かの検討をすすめることを計画していた。実際には、『正義論』の第三部と、ピアジェとコールバーグの特定著作を精読することができた。また、関連する道徳系の発達心理学の著作も精読することができた。また、ロールズのピアジェ派道徳心理学の理解に疑問を唱えているマーサ・ヌスバウムの議論も検討することができた。また、2017年9月に南アフリカ共和国で開催されたHDCA (Human Development and Capability Association)の大会に一般参加し、政治的行為者についての議論に参加するとともに、二年次に意見交換を行う予定の海外の研究者と交流することができた。また、ヘルスケアワーカなど外国人労働者が不正な構造を変革する上で必要とするケイパビリティについて論じた研究論文を、2018年2月に海外のジャーナルに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ロールズ『正義論』の第三部の精読・精査と関連する道徳心理学の理論研究を計画していたため、こちらは完遂することができた。また初年度は同時に、2017年9月に南アフリカ共和国で開催されたHDCA (Human Development and Capability Association)の大会で、正義の行為者の道徳能力に関する発表を行うことを予定していたが、研究開始前の応募で準備不足だったためペーパーがアクセプトされず、図らずも一般参加となった。しかし、今年度の研究成果を踏まえたペーパーは2018年9月にアルゼンチンで開催される同学会の大会にアクセプトされたため、一年遅れとなるがそちらで発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
二年次は、初年次に得た知見に照らして、グローバルな正義を実現するためには人々の内にどのような道徳の発達が必要とされるのかを明らかにする。具体的には、正義論と道徳心理学の接続の試論を、グローバルな事例を通して行う。その際、日本のケアワーカーの受け入れに伴う倫理的諸問題のうち、国内の他者である「彼ら」に対し日本においてはどのような道徳的構えとそれに伴う教育が必要であるのかを考察する。特にEPA(経済連携協定)にもとづく外国人看護師・介護士の人権状況に焦点を合わせる。こうした展開研究の成果を、2018年8月に北京で開催される世界哲学大会(World Congress of Philosophy)と2018年9月にアルゼンチンで開催されるHDCA (Human Development and Capability Association)の大会で発表する予定である。また、日本とドイツのケアワーカーの受け入れに伴う倫理的問題の類似点について、ドイツにて資料収集を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
洋書の価格変更による。次年度の図書費に充てる予定である。
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