研究課題/領域番号 |
17K02194
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小林 琢自 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (60518091)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 現象学 / 現象学的社会学 / 団体論 / 国家論 / 全体主義 |
研究実績の概要 |
尾高朝雄の国家論における「全体」概念の解明が本研究のテーマである。 30年度は引き続き、国会図書館、各特殊文庫、国公立図書館に残存する資料調査と各文献の精読によって、尾高の、同時代の現象学的・社会科学的な諸理論の独特の結合仕方を解明する「理論的研究」と、戦前-戦時下における時局的言説を体系的に調査する「歴史的研究」を並行して続けた。とくに30年度上半期には、交付申請書に記載した30年度における具体的な研究計画において、ハイデガー存在論の影響と、経済学者O・シュパンの普遍主義の影響に関するそれぞれの解明を、学術論文の形で仕上げ、公にすることを予定しており、その執筆作業を進めた。 また同時に、29年度の研究成果によって、尾高の「全体」概念へのS・クラカウアーの影響と批判的展開を明らかにすることの重大性と、1920年代の日本の社会学における現象学受容という、より基本的な文脈から捉え直すことの必要性に気づき、調査を続ける中で、これまで公に採り上げられることのなかった新資料を多数発見していった。尾高の「全体」概念の根本となり、しかも国家論構想の最初期に位置しながら、後期のヘーゲル哲学への展開を準備するものである点で、この研究方向と調査の成果を先に公にすることが重要であると判断するにいたった。 したがって、とりわけ30年度の下半期にはクラカウアー/尾高に関する研究に傾注し、論文の執筆にとりくんだ。この研究のために立命館大学において、現象学研究者およびフランクフルト学派研究者と連携して研究会を発足し、毎月の研究会において意見交換を行った。その成果は30年度中に研究論文として完成したため、ただちに学術雑誌への投稿を予定している。ハイデガー/尾高の研究論文、シュパン/尾高の研究論文は現在執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「理論的研究」および「歴史的研究」に係る資料調査については、当初予定していたとおり、尾高に影響を与えた現象学および社会科学的な文献の調査と書き込みの精査、それらの体系的な把握が順調に進められている。現在は戦中におけるヘーゲル研究の資料の収集へと進んでいる。また、当初明確に予想されてはいなかった尾高の国家論への同時代からの批判的反応を示す新たな資料についても調査が進んでいる。 とくに「理論的研究」に関して、30年度は新たに、クラカウアー/尾高の研究に着手し、論文として完成したため、公表予定である。これは本研究の課題達成にとって不可欠な研究であり、当初の予定を超えてその内容を大幅に充実するものである。 ただし、上記の研究に着手したことによって、申請書において30年度に予定していたハイデガー存在論、およびシュパンの普遍主義に関するそれぞれの論文の完成と公表には至っていない。現在執筆中の状況である。予定されていた成果の学術会議での発表、論文としての公表という点では、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる31年度は、第一の目標として、日本国内および海外に現存する資料調査を続けつつ、当初の予定を達成すべく以下の二つの論文を公表する。上半期に現在執筆中のハイデガー/尾高の研究論文の完成と公表、次いで、これまでの「全体」概念の研究を踏まえたうえで、シュパン/尾高の研究を学術会議において発表し、論文として公表する。 また、第二の目標として、本研究の課題に関わって前年度から開始した研究会メンバーによって、学術会議におけるワークショップの開催を計画している。これにより、同時代の哲学・社会科学的な文脈の中で、これまでに明らかにされてこなかった尾高の国家論をその「全体」概念の内実をいっそう際立たせることによって、捉え直すという課題を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年一回のワークショップ開催を予定していたが、昨年度は人件費を必要とする規模で開催することは見合わせ、代わりに少人数の研究会発足し、毎月会議室において実施したため、人件費・謝金は使用しなかった。その分は、最終年度で開催するワークショップの人件費・雑費と、学術会議への出張に使用するモバイルパソコンの費用に充てる予定である。
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