研究課題/領域番号 |
17K02196
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
中澤 務 関西大学, 文学部, 教授 (10241283)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソフィスト / 古代ギリシア / 紀元前5世紀 / 自然哲学 / 弁論術 / 相対主義 / ノモスとピュシス |
研究実績の概要 |
平成30年度においては、研究実施計画にもとづき、平成29年度に実施した「全体の予備調査・資料収集」および「基礎的研究1」の成果を踏まえつつ、「基礎的研究1」の完成を目指すとともに、「基礎的研究2」の本格的な取組を開始した。具体的な研究実績の概要は、以下のとおりである。 ①基礎的研究1(紀元前5世紀の自然哲学):平成29年度の基礎的調査に基づき、紀元前五世紀の自然哲学者たちが当時のさまざまな思想家たちに与えた影響を、ソフィストたちの思想、弁論術の思想、医学思想、歴史・文学などの多様な側面から解明した。特に、エンペドクレス、メリッソス、ゼノン、デモクリトスなど、ソフィストたちの思想と関係の深い哲学者について、その影響関係を具体的に検討した。具体的な研究成果としては、(1)アノニュムス・イアンブリキの思想におけるデモクリトスの哲学の影響、(2)メリッソス、ゼノンなどのエレア派の哲学と、ゴルギアス『〈あらぬもの〉について、あるいは自然について』における認識論批判との関係の解明などが挙げられる。なお、(1)については、具体的な成果を論文にまとめ、2018年9月に公表した。(2)の研究成果は、今後、研究期間内に公表する予定である。 ②基礎的研究2(言語と世界をめぐる認識論):この研究の目的は、紀元前五世紀における言語(ロゴス)と世界をめぐる問題を、相対主義、弁論術、〈名前の正しさ〉という三つの観点から解明することにある。本年度は準備作業として、それぞれのテーマにおける研究状況を調査し、確認するとともに、主要なテキストの分析をおこなった。具体的な研究内容としては、プラトン『プロタゴラス』と『テアイテトス』におけるプロタゴラスの相対主義思想の分析、ゴルギアスを中心とする紀元前五世紀の弁論術の調査などを実施した。なお、この基礎的調査の成果は、一部、上述の(1)の研究成果に反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に示されたロードマップ通りに進捗しており、「基礎的研究1」については、平成30年度で完了することができた。「基礎的研究2」についても、研究は順調に進行し、平成30年度に予定されていた準備作業はおおむね完了させることができた。また、平成31年度に計画されていた本格的研究についても、その一部については、平成30年度のうちに着手しており、平成31年度内に「基礎的研究2」を完了させられる見込みである。総合的に見て、研究は計画通り順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初の計画通り順調に進展しており、予想された通りの研究成果が得られている。今後の研究計画についても、特に大きな問題は発生しておらず、現在のところ、予定された研究計画をすべて遂行できる見込みである。研究計画を変更する必要性は認められず、今後も研究計画に忠実に従い、「基礎的研究2(言語と世界をめぐる認識論」、「基礎的研究3(共同体論と倫理思想)」、「総合的研究(紀元前5世紀の哲学・倫理思想」の順番で、着実に研究を進めていく予定である。
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