研究課題/領域番号 |
17K02198
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研究機関 | 長野県短期大学 |
研究代表者 |
馬場 智一 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (10713357)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コーヘン / ヴェイユ / 宗教 / ユダヤ教 / 無限判断 / キリスト教 / 存在の彼方 |
研究実績の概要 |
本年度は研究実施計画のうち初年度であり、『哲学的体系における宗教概念』と『ユダヤ教を源泉とする理性の宗教』の読解に充て、その成果を下半期にまとめ、海外での研究打ち合わせを行う予定であった。2年目はコーヘンと「その子供たち」との比較研究、3年目はコーヘンとスピノザ問題を扱う予定である。 1年目は『哲学的体系における宗教概念』の読解に予想より時間がかかり、『ユダヤ教を源泉とする理性の宗教』には十分に読解作業を割けなかった。その代り、2年目の作業である「その子供たち」(陰に陽にコーヘンの影響下にある「ユダヤ系」哲学者たち)との比較作業の準備作業として、当初予定していなかった「ユダヤ系」哲学者シモーヌ・ヴェイユの『根をもつこと』を読解し、特にそこで論じられる欲求としての責任概念について、レヴィナスやハイデガーとの比較作業を行った。 『哲学的体系における宗教概念』では、哲学体系において宗教が占める意義が、倫理学、論理学、美学、心理学のそれぞれにおいて述べられている。論理としては、あらゆる判断の前提としてすでになされている(要請される)無限判断の論理が貫徹されているように思われる。 シモーヌ・ヴェイユはユダヤ系の出自をもちながらもユダヤ的伝統には傾倒することなく、むしろキリスト教神秘主義思想やギリシア思想に関心を深めた。そうした宗教的思考は『根を持つこと』における一種の人間実存論および社会哲学と決して無関係ではない。超越への志向とそれを要請する人間存在と(ありうべき)社会の関係は、コーヘンの宗教論とパラレルな面も見られる。 ヴェイユに関する発表をイギリスとブルガリアで、コーヘンとマイモニデスに関する発表を東京で行った。年度の最後に渡仏しコーヘン研究者のノールマン氏と研究打ち合わせを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画を若干変更して、シモーヌ・ヴェイユとの比較作業を行ったためやや遅れている。また、『哲学体系における宗教概念』の読み込みにも時間がかかったので、『ユダヤ教を源泉とする理性の宗教』の読解が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
『哲学体系における宗教概念』の要点について、簡潔にまとめ、『ユダヤ教を源泉とする理性の宗教』の読み込みにまずは注力し、その後当初の予定通り、コーヘンの子供たちとの比較作業を始める。
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